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日本工業大学の桑原拓也准教授が磁性流体をプラズマ放電電極とした空気清浄デバイスを開発 -- ディーゼル微粒子や花粉の捕集除去、殺菌効果のある空気清浄への応用に期待

大学ニュース  /  先端研究

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【研究成果のポイント】
・PM2.5などの大気汚染物質であるディーゼル微粒子を効果的な静電気力で捕集可能。
・一般的な膜や不織布、ハニカムフィルタと異なり、極めて小さい圧力損失で微粒子捕集除去が可能。
・オゾンやプラズマ活性種を発生することが可能で、殺菌への利用が期待される。

【研究内容】
 日本工業大学 基幹工学部 機械工学科の桑原拓也准教授は、磁性流体(注1)を低温プラズマ放電電極とした空気清浄デバイスを開発しました。静電気力による微粒子捕集はナノ粒子を含む幅広いサイズの微粒子捕集に効果的であることは知られているものの、ディーゼル微粒子のような電気を通しやすい微粒子に対しては、捕集電極で帯電を失って再飛散するため、適用は困難とされてきました。しかし今回、磁性流体をプラズマ放電電極として用いることでこの問題を解決しました。

 磁性流体を磁石で保持するとスパイク現象と呼ばれるウニの針のような多数の磁性流体スパイクが生じます。さらに磁性流体を電極として交流高電圧を加えると、図1に示すように、スパイクから低温プラズマ放電(注2)が起こります。図2に示すように、この放電内を微粒子が通過すると帯電し、静電気力により磁性流体電極に引き寄せられます。この際、一般的な固体捕集電極ではディーゼル微粒子のような電気を通しやすい微粒子は再飛散しますが、液体である磁性流体電極ではその表面に吸着するため捕集ができます。この捕集メカニズムと捕集率を解明し、これまでの技術では難しかった静電気力によるディーゼル微粒子捕集を実現しました。

【研究成果の特長】
 磁性流体を低温プラズマ放電電極とした空気清浄デバイスの特長として、微粒子の電気的特性に左右されないため、ディーゼル微粒子を含む多くの種類の微粒子に対して、静電気力による捕集率の高い空気清浄が可能であることが挙げられます。また、プラズマ放電の消費電力は小さい上、一般的な膜や不織布、ハニカムフィルタと異なり、極めて小さい圧力損失(空気がフィルタを通過するときの流れの抵抗)で微粒子捕集除去が可能であることから、空気清浄でエネルギー消費の大きい送風のエネルギーを抑えられ、省エネな空気清浄が実現できます。さらに、プラズマ放電で殺菌や脱臭で利用されているオゾン(注3)やプラズマ活性種が発生するため、微粒子捕集と殺菌の空気清浄ができます。

 今後、屋外ではディーゼル微粒子などの大気汚染物質の捕集除去、屋内では花粉等の微粒子捕集とプラズマ活性種による不活性化、殺菌効果のある空気清浄の応用が期待されます。

【用語説明】
(注1)磁性流体:磁石等から生じる磁場に感応する液体。磁性流体を磁石に近づけると磁石に引き寄せられる。また、磁力線に沿うように多数の針状の突起物が現れ、これをスパイク現象という。
(注2)低温プラズマ放電:気体に高いエネルギーを加えると分子が電離し、陽イオンと電子が分かれた状態になる。これをプラズマという。気体にエネルギーとして高電圧を加え、電子の温度は高いが、周囲の気体の温度は比較的低いプラズマを低温プラズマという。低温プラズマを発生させる際に、電子が気体の中を流れる現象を低温プラズマ放電という。
(注3)オゾン:酸素または空気の低温プラズマ放電(一般的には無声放電)で発生する。酸化力の強い物質で、低濃度のオゾンは殺菌に利用される。また、不安定な物質であるため、時間の経過とともに酸素になる。酸素または空気の低温プラズマ放電ではOHラジカルのようなその他の酸化力の強いプラズマ活性種の発生も確認されていて研究が進められている。

【関連論文】
・著者: Takuya KUWAHARA,
・論文題目: Fundamental characteristics of low-resistive particulate matter removal using a magnetic fluid and nonthermal plasma
・掲載誌名: Journal of Magnetism and Magnetic Materials, Vol.498, 166161, 2020.
・DOI: 10.1016/j.jmmm.2019.166161

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図1.png 図1 磁性流体電極からの低温プラズマ放電の様子

図2.png 図2 磁性流体をプラズマ放電電極とした空気清浄の原理