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【京都産業大学】ミトコンドリアにバレル(円筒)型膜タンパク質をつくる仕組みを解明!将来的な病気の治療法開発、老化を防ぐなどの可能性に期待

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京都産業大学生命科学部 遠藤斗志也教授らの研究グループは、クライオ電子顕微鏡を用いて、バレル型構造を作る途中の基質タンパク質のスナップショット構造を決定することに成功した。ミトコンドリア外膜に存在し、ミトコンドリア機能に必須の「バレル型膜タンパク質の構造形成のメカニズム」の解明により、それに関連する病気の治療法の開発や、ミトコンドリア膜へのタンパク質組込みの効率を制御することで老化を防ぐなどの新たな可能性が開けることが期待される。この研究成果は、2023年1月6日(日本時間)に英国科学誌「Nature Structural and Molecular Biology」電子版に掲載された。

酵母から人まで広く真核生物の細胞内に見られる必須の細胞内小器官であるミトコンドリア外膜には小分子やタンパク質が通る孔を提供する「バレル型膜タンパク質」が存在する。健全なミトコンドリアは人間の健康にとって重要となるが、これまでミトコンドリアの機能に必須であるバレル(円筒)型の構造がどのようにできるのかは不明であった。
本研究では、SAM複合体上で基質タンパク質が円筒形に巻き上げられる仕組みを解明するための基質として「バレル型膜タンパク質のTom40」を選定。そのバレル構造形成が遅れる変異体を作製した。そして酵母細胞からSAM複合体とTom40変異体(フォールディング中間体)の複合体を精製し、東京大学のクライオ電子顕微鏡により精密構造を3.2Åの分解能で決定した。
ミトコンドリア機能に必須の「バレル型膜タンパク質の構造形成のメカニズム」の解明により、それに関連する病気の治療法の開発や、ミトコンドリア膜へのタンパク質組込みの効率を制御することで老化を防ぐなどの新たな可能性が開けることが期待される。

遠藤教授は、「βシートは平面ではなくカーブする傾向がありますが、バレル型膜タンパク質をつくるβストランドの本数は様々なので、末端側からつくられるβシートは正確に閉じるべきC末端βストランドに向かって成長していく必要があります。今回の研究で、シートの正確な成長は、数の部位で正しくコントロールされて目的方向に導かれていくことが明らかになりました」とコメントしている。



むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

関連リンク
・ミトコンドリアにバレル(円筒)型膜タンパク質をつくる仕組みを解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20230106_345_release_ka01.html
・ミトコンドリアにバレル(円筒)型膜タンパク質を組み込む仕組みを解明 -- 英国科学誌Nature(オンライン版)に掲載
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_ls/20210108_198_release.html
・生命科学部 先端生命科学科 遠藤 斗志也 教授
 https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/ls/endo-toshiya.html


▼本件に関する問い合わせ先

京都産業大学 広報部

住所

: 〒603-8555 京都市北区上賀茂本山

TEL

: 075-705-1411

FAX

: 075-705-1987

E-mail

kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp

0106_02.jpg 図1: 2021年に解明したSAM複合体によるβバレル型膜タンパク質の外膜への組込み反応サイクル SAMdimer複合体のb部位のSam50と基質のβバレル型膜タンパク(Tom40など)とが入れ替わる。基質はバレル型構造を形成しながら外膜に組み込まれる。SAM複合体のもう一つのサブユニットMdm10(βバレル型膜タンパク)が成熟体Tom40と入れ替わり、バレル型構造を作ったTom40をSAM複合体から追い出す。Mdm10とSam50が再び入れ替わって最初の状態に戻る。

0106_03.jpg 図2: SAM複合体上のβバレル構造形成途中の基質Tom40(とSAM複合体)のクライオ電子顕微鏡構造 赤が基質Tom40。途中までβバレル構造ができていることがわかる。

0106_04.jpg 図3: SAM複合体によって基質Tom40のβシートが円筒型に巻き上がる仕組み