神戸女学院大学

神戸女学院が「キャンパス再整備マスタープラン」実現に向けて、2024年からキャンパス一部改修に着手 -- ヴォーリズ建築を未来に繋げ、市民に開かれた学び舎を目指す

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神戸女学院(兵庫県西宮市)では、建築家の大谷弘明氏(日建設計)を「マスターアーキテクト」に選定し、2021年「キャンパス再整備マスタープラン」を策定。これを実現する第一歩として、2024年から、重要文化財となっているヴォーリズ建築を中心とした岡田山キャンパスの一部改修を行う。9月11日には報道関係者を対象とした「改修前キャンパス取材会」を開催した。当日は、設計チーフの大澤智氏(日建設計)による新棟デザインについての説明や、マスタープランのスタートとなる「理学館西側地域再整備計画」などに関するトークセッション、キャンパス見学が行われた。理学館西側の新棟建設工事は順調に進めば2024年6月から着手する予定で、創立150周年を迎える2025年秋の完成を目指す。

 神戸女学院岡田山キャンパスは、明治末期から昭和初期にかけて多くの西洋建築を手掛けたウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の建物を中心としており、12棟の建築等が国の重要文化財に指定されている。それらの建築群を長く守ってきた一方、教育環境の変化に応じた増改築においては、全体の調和への配慮に加え、新しい時代に対応したあり方が課題となる。また、従来も西宮市民との交流を図ってきたが、山の上にある校舎の全貌に市民が触れる機会は多くなかった。

 そこで神戸女学院では、2024年の学部新設(国際学部・心理学部)にあわせて、キャンパスの一部の再整備を決定。「キャンパス再整備マスタープラン」を策定し、地域に根差した、より市民に開かれたキャンパスを目指す。

 キャンパス再整備にあたっては、日建設計に所属する大谷弘明氏を「マスターアーキテクト」として選定。多くの大学キャンパスの設計実績がある日建設計チームとともにヴォーリズの思いを継承し、重要文化財を未来につなぐとともに、市民にも開かれたキャンパスづくりを実現していく。

 9月11日には、改修を前にメディア向けの取材会を実施。当日はまず、設計チーフの大澤智氏(日建設計)が、新棟デザインのポイントについて説明した。続いて、一級建築士でもある神戸女学院の北條敦子理事・総務部長と、ともに重要文化財神戸女学院保存活用委員会委員である、近代建築の保存改修デザインをリードするプロフェッサー・アーキテクトの田原幸夫氏(京都工芸繊維大学 客員教授)、ヴォーリズ建築研究の第一人者・山形政昭氏(関西学院大学 客員教授)が加わり、トークセッションを実施。マスタープランの始まりとなる「理学館西側地域再整備計画」と新棟建設の意義や、美しい建築の社会的重要性などについて意見を交わした。
 その後のキャンパスツアーは、ヴォーリズのオリジナル建築群の持つ価値と、細部にまで宿る美を体感する時間となった。

 創立150周年を迎える2025年秋の完成を目指しており、順調に進めば2024年6月から新棟の建設工事に着手する予定。

■トークセッションの内容
●北條敦子 (神戸女学院 理事・総務部長)
【プロフィール】
 神戸女学院中高部を経て同大学文学部英文学科卒、一級建築士。京都国立博物館専門員として平成知新館新築事業に携わった後、施設課長として神戸女学院に着任。2022年4月より総務部長。2023年4月より理事・総務部長。
【内 容】
 建学の精神、そして美が校舎として「成った」(Beauty becomes a college)のが神戸女学院のキャンパスである。そこで学ぶことにより人格を涵養し、美的感性を高めることができる。このキャンパスの価値は、ここを訪れて体感しないと理解できないだろう。この取材会を機会に、90年間西宮の地に静かに佇んできた神戸女学院を再発見してほしい。そして、少しでも多くの人に、このキャンパスの建築が持つ力を感じ取っていただきたいと願っている。

●大澤智氏 (日建設計)
【プロフィール】
 沖縄科学技術大学院大学、大阪大学箕面キャンパス、インフォシス チェンナイキャンパスなど国内外で豊かなランドスケープを活かした優れた大学のプロジェクト等を担当。現在、神戸女学院「キャンパス再整備マスタープラン」全体の設計チーフを務めている。
【内 容】
 ヴォーリズの精神を承継しつつも模倣はしないことが設計のコンセプト。ヴォーリズの基本的アイデアである中庭、建物間の軸線を合わせること、回廊で建物を繋ぐことを活かし、地上部分にラウンジを設けて、これまで裏側であった理学館西側地域を新たなエントランスとする。ラウンジは豊かな緑に臨み、周りに巡らした回廊は、人々の出会いの場となる。そして、低く抑えた建物は重要文化財の理学館と社交館を引き立て、一方で、理学館はラウンジと同一軸線上にあるため、その借景として活かされる。

●田原幸夫氏 (京都工芸繊維大学 客員教授)
【プロフィール】
 東京駅丸の内駅舎復元設計を担当。直近では京都の新行政棟・文化庁移転施設整備にあたりヘリテージ・アーキテクトを務めた。現在は京都工芸繊維大学客員教授として、近代建築の保存改修デザインをリードする、プロフェッサー・アーキテクトの立場にある。重要文化財神戸女学院保存活用委員会委員。
【内 容】
 近代建築が群として指定された重要文化財はここにしかなく、今回の再整備はキャンパス全体を都市的視点からも検討されており素晴らしい。日本の街にはフェイクが溢れているが、ここには本物がある。フェイクに慣れると本物を見分ける力が失われる。神戸女学院という本物の中で教育を受けること、そこで生活することの価値は極めて高いと考えている。

●山形政昭氏 (関西学院大学 客員教授)
【プロフィール】
 主な研究分野は、建築史、建築計画。大阪芸術大学教授を務めた。特にウィリアム・メレル・ヴォーリズの調査研究の第一人者であり、今日の建築家ヴォーリズの評価の高まりは山形氏の貢献に負うところが大きい。重要文化財神戸女学院保存活用委員会委員。
【内 容】
 数あるヴォーリズ建築の中でも美しさにおいては間違いなく神戸女学院が一番。現在では入手できない貴重な素材もよく残っており、建築のディテールも実用的でありながら美しく、入念な設計による見所が沢山ある。キャンパスグリーンも素晴らしいし、旧櫻井家別邸の庭園に由来する植栽が、そのまま残されてキャンパスの一部になっていることも特色である。


■「理学館西側地域再整備計画」
 「キャンパス再整備マスタープラン」の最初の計画となる。敷地西側部分に新棟を建設。高低差を利用することで、重要文化財である既存の「社交館」「理学館」の西側からの展望を改善し、両館をより引き立たせるものになる。完成は創立150周年を迎える2025年秋を予定している。
 詳細は添付PDFを参照。


●ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880-1964)
 アメリカ合衆国に生まれ、1905(明治38)年の来日後は関西を拠点とし、数多くの西洋建築を残した。建築家としての活動のほか、社会事業家、キリスト教の信徒伝道者、実業家としての顔も持つ。居住した滋賀県近江八幡における各種建築物、心斎橋大丸、関西学院大学などを手掛けた。
 神戸女学院には妻の母校という縁があり、岡田山現キャンパス移転時に建築を担当。

■神戸女学院岡田山キャンパスの変遷
 神戸女学院は1875(明治8)年に設立され、1933(昭和8)年に岡田山キャンパスに移転した。ヴォーリズが手掛けた岡田山キャンパスの中心となるのは中庭を囲む4棟の校舎で、文学館ならびにそれと向かい合う理学館、反対の対角線上には芸術を象徴する音楽館を背景に、智を象徴する図書館があり、その正面に精神を象徴するソールチャペルと講堂を有する総務館が建っている。
 1995(平成7)年の阪神淡路大震災では2棟が全壊したほか、半壊のために取り壊しを余儀なくされたヴォーリズ建築もあったが、文学館は屋根部分が損傷したものの無事復旧。キャンパスの中心である中庭を囲む4棟を始め、12棟のヴォーリズ建築は震災を乗り越えた。
 2014(平成26)年、これら12棟の建築とパーゴラ(藤棚)が国の重要文化財の指定を受けた。
 2023(令和5)年、神戸女学院は日建設計の提案したキャンパス再整備マスタープランに基づき、その嚆矢として「理学館西側地域再整備計画」に着手。ヴォーリズによるオリジナルの校舎群と調和し、新しい時代の開かれた神戸女学院を具現化する新棟の設計が進められている。

(関連記事)
・神戸女学院大学が9月11日に「改修前キャンパス取材会」を開催 -- 重要文化財の校舎で知られる同大がキャンパスの一部改修を前に、街に開かれた新たな学び舎づくりについて考える(2023.09.01)
 https://www.u-presscenter.jp/article/post-51389.html

▼本件に関する問い合わせ先

学校法人神戸女学院 経営企画課

加藤(かとう)

住所

: 〒662-8505 兵庫県西宮市岡田山4-1

TEL

: 0798-51-8530

FAX

: 0798-51-8521

E-mail

kato@mail.kobe-c.ac.jp

image02.jpg 「理学館西側地域再整備計画」イメージパース

image03.jpg 「理学館西側地域再整備計画」イメージパース

image01.jpg 左から:北條敦子理事・総務部長、山形政昭氏、田原幸夫氏、大澤智氏