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要点
・医薬品製造工程でのインラインLive品質管理に向けた、検査基盤システムを確立。
・カーボンナノチューブ(CNT)型の紙のように薄くて軽い光イメージャーシートにより、医薬錠剤を透視してリアルタイムで光計測する非破壊検査へと展開。
・CNT型シートはテラヘルツ–赤外という眼には見えない光で錠剤の成分を同定でき、取り違えや混入異物を検知することで隠れた欠陥の発見が可能。
中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科の李 恒 助教、久保田 実樹 大学院生(同 理工学研究科 電気電子情報通信工学専攻・博士前期課程2年)、河野 行雄 教授、木下 祐哉 大学院生(同 理工学研究科 電気電子情報通信工学専攻・博士前期課程2年(※ 研究当時))らを中心とする研究チームは、独自の光イメージャーシートデバイスを用いた新たな医薬品検査システムを開発しました(図参照)。このイメージャーは日本発の先端材料:カーボンナノチューブ(CNT)薄膜から成り、ヒトの眼には見えない光であるミリ波・テラヘルツ・赤外線(MMW、THz、IR)を高感度に検出します。また、特にTHz-IR光計測は医薬品成分に対する透視・材質同定へ特化しており、取り違えや混入異物の検知に有用です。李 助教・久保田 大学院生らは、CNT型イメージャーがもたらす「シールのように貼り付けられる操作性」と「THz-IR光の潜在能力を最大限に引き出す豊かな材料特性」を活用し、ベルトコンベア状の錠剤搬送ラインへと、さりげなくしなやかに実装可能な非破壊検査プラットフォームを確立しました。
健康寿命の増進に向けては、流通前の段階における網羅的な医薬製品への検査が鍵を握ります。しかし、含有成分/混入異物の広範な材質同定を可能にする計測技術は、巨躯な装置構成からインライン(製造現場での本来の環境を妨げない操作形態)な実装に課題を残しており、依然として欠陥漏れを招き得る抜き取り検査での利用が主流となっています。この状況に対して本研究グループが確立したシステムは、小型CNT型イメージャーを搬送といった創薬ラインへシールのように薄く軽く装着でき、創薬工程と並行して含有成分/混入異物に対するリアルタイムかつ非破壊な材質同定情報を全数画像検査結果としてユーザーへ提供します。システム化の鍵は、事前にデータベース化された分光スペクトルから対象の医薬品検査へ直結する光照射波長を選定することです。医薬品を含むモノづくり現場では、取り扱い対象の材質・成分を事前に把握可能で、この情報から逸脱するインライン環境上の光学的挙動を欠陥・異常の発生と紐付けることができます。また、多波長光照射を要する分光装置とは異なり、単一帯域光を照射する光源はマッチ箱程度という小型サイズで扱えます。本研究では対象の医薬成分を3種(鎮痛剤・解熱剤・抗血小板剤)に事例化し、これらの非破壊識別に適応する3波長の小型光源を配列し、CNT型PTEイメージャーシートと共に集積しました。これらの取り組みは、基礎研究部分での光学分野における裾野を拡げるとともに、我が国が過去・現在・そして今後も強く依存し続ける医薬品利用へ、非破壊検査による安全性担保という観点から貢献しうるか真価を試されるものです。
本研究グループではこれまでにCNT膜による光学素子への適性の理論・実験的な解明、高性能なMMW-IRセンシングの実証、MMW-IR帯での画像検査アルゴリズムの確立、また卓上ロボットによる簡便・高速・高歩留まりなCNT型イメージャーの量産化といった独自性を一つ一つ打ち出しています。今回の成果では、CNT型イメージャーの光学素子としての豊かな機能性に加えて、シートデバイスとしての扱い易さを最大限に活かした出口戦略を具現化するものです。日本発のCNT膜が有する、先端材料としての新たなポテンシャル(産業用の非破壊検査デバイス・システム)を遺憾なく発揮し、我が国の基礎科学とその成果を更に加速させる位置付けと言えます。
本研究成果は、2025年9月11日付で国際科学誌『Light: Science & Applications』にオンライン公開されます。
健康寿命の増進に向けては、流通前の段階における網羅的な医薬製品への検査が鍵を握ります。しかし、含有成分/混入異物の広範な材質同定を可能にする計測技術は、巨躯な装置構成からインライン(製造現場での本来の環境を妨げない操作形態)な実装に課題を残しており、依然として欠陥漏れを招き得る抜き取り検査での利用が主流となっています。この状況に対して本研究グループが確立したシステムは、小型CNT型イメージャーを搬送といった創薬ラインへシールのように薄く軽く装着でき、創薬工程と並行して含有成分/混入異物に対するリアルタイムかつ非破壊な材質同定情報を全数画像検査結果としてユーザーへ提供します。システム化の鍵は、事前にデータベース化された分光スペクトルから対象の医薬品検査へ直結する光照射波長を選定することです。医薬品を含むモノづくり現場では、取り扱い対象の材質・成分を事前に把握可能で、この情報から逸脱するインライン環境上の光学的挙動を欠陥・異常の発生と紐付けることができます。また、多波長光照射を要する分光装置とは異なり、単一帯域光を照射する光源はマッチ箱程度という小型サイズで扱えます。本研究では対象の医薬成分を3種(鎮痛剤・解熱剤・抗血小板剤)に事例化し、これらの非破壊識別に適応する3波長の小型光源を配列し、CNT型PTEイメージャーシートと共に集積しました。これらの取り組みは、基礎研究部分での光学分野における裾野を拡げるとともに、我が国が過去・現在・そして今後も強く依存し続ける医薬品利用へ、非破壊検査による安全性担保という観点から貢献しうるか真価を試されるものです。
本研究グループではこれまでにCNT膜による光学素子への適性の理論・実験的な解明、高性能なMMW-IRセンシングの実証、MMW-IR帯での画像検査アルゴリズムの確立、また卓上ロボットによる簡便・高速・高歩留まりなCNT型イメージャーの量産化といった独自性を一つ一つ打ち出しています。今回の成果では、CNT型イメージャーの光学素子としての豊かな機能性に加えて、シートデバイスとしての扱い易さを最大限に活かした出口戦略を具現化するものです。日本発のCNT膜が有する、先端材料としての新たなポテンシャル(産業用の非破壊検査デバイス・システム)を遺憾なく発揮し、我が国の基礎科学とその成果を更に加速させる位置付けと言えます。
本研究成果は、2025年9月11日付で国際科学誌『Light: Science & Applications』にオンライン公開されます。
詳細は大学Webサイト(https://www.chuo-u.ac.jp/aboutus/communication/press/2025/09/80697/)をご覧ください。
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
李 恒 (リ コウ)
中央大学理工学部 助教(電気電子情報通信工学科)
TEL: 03-3817-1860
E-mail: li[アット]elect.chuo-u.ac.jp
<広報に関すること>
中央大学 研究支援室
TEL: 03-3817-7423または 1675 FAX: 03-3817-1677
E-mail: kkouhou-grp[アット]g.chuo-u.ac.jp
※[アット]を「@」に変換して送信してください。
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李 恒 (リ コウ)
中央大学理工学部 助教(電気電子情報通信工学科)
TEL: 03-3817-1860
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<広報に関すること>
中央大学 研究支援室
TEL: 03-3817-7423または 1675 FAX: 03-3817-1677
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大学・学校情報 |
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大学・学校名 中央大学 |
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URL https://www.chuo-u.ac.jp/ |
住所 東京都八王子市東中野742-1 |
学長(学校長) 河合久 |