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【日本大学】下水汚泥燃焼灰の肥料活用に関する生物資源科学部と藤沢市との共同研究が始動

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概要:神奈川県藤沢市は、下水処理過程で発生する下水汚泥燃焼灰を菌体りん酸肥料として登録しました(自治体として2例目)。この有効性と安全性を科学的に評価するため、日本大学生物資源科学部と藤沢市は、「植物生育に対する下水汚泥燃焼灰の有効性・可能性の評価」に関する共同研究を始動させました。

1.下水汚泥燃焼灰の肥料価値
今般藤沢市が菌体りん酸肥料として登録した下水汚泥燃焼灰は、肥料としての価値が高いことから、国内資源の乏しいわが国での今後の在り方の事例として注目されます。

・高濃度のりん酸を含有:下水汚泥焼却灰は高濃度のりん酸を含有しています。りん酸は生物の生育に必須で、植物のエネルギー代謝や細胞膜の維持などに重要な役割をもつことから、植物による要求性が比較的高い成分です。一方りん酸は、植物の必要量を土壌から吸収し難いので、肥料三要素の一つとなっています。
・資源循環に寄与:下水汚泥は下水処理の過程で得られる沈殿物で、主として下水浄化に関与する微生物や原生動物の塊から成っています。そのため上述したようにりん酸分に富んでいます。これまで下水汚泥は廃棄されるか、建設資材に混合する等の限られた用途で利用されていました。この肥料化により、りん酸資源の確保と環境負荷低減を実現し、資源循環に寄与します。
・菌体りん酸肥料としての登録:肥料法改正により、下水汚泥を菌体りん酸肥料として流通させられるようになりました。菌体りん酸肥料は徹底した品質管理が求められており、それにより汚泥肥料では認められなかった成分濃度の保証と他肥料等との混合が認められます。その結果下水汚泥燃焼灰の肥料利用の幅が広がります。

2.共同研究「植物生育に対する下水汚泥燃焼灰の有効性・可能性の評価」の意義
当共同研究は、地域の問題に対して大学と自治体が連携して取り組むもので、未利用資源の有効利用と持続可能な社会の構築に貢献します。
・有効性の評価:下水汚泥燃焼灰に含まれるりん酸の、農作物生育に対する有効性を評価します。とくに藤沢市周辺にはりん酸の効果が出難い黒ボク土が広がっています。この土壌には、水溶性のりん酸ではなく、く溶性*)のりん酸を施用することが好ましいとされています。藤沢市下水汚泥燃焼灰のりん酸はく溶性が多いことから、農作物への有効性が期待されます。
・可能性の評価:農地への施用法の工夫や他肥料との組合せにより、その有効性を一層高め得る方策を探り、下水汚泥燃焼灰利用の可能性の拡大を図ります。
・安全性の評価:下水汚泥燃焼灰には微量の重金属が含まれるため、その品質維持のためにきわめて厳格な規制値が設けられています。藤沢市の下水汚泥燃焼灰はその規制値を下回っているため、全く問題ありませんが、これをさらに担保するために、下水汚泥燃焼灰を肥料利用した際の農作物への影響を評価します。

【用語説明】:
く溶性*):く溶性りん酸は、植物の根が分泌する有機酸に溶解されて作物に吸収されるタイプのりん酸です。水に溶けないので即効性はありませんが、肥効が持続します。黒ボク土では土壌溶液中にアルミニウムイオンが溶出しているため、水溶性のりん酸と反応してりん酸アルミニウムが生成されます。植物はこれを吸収することができません。く溶性のりん酸は水に溶けないのでアルミニウムイオンと反応せず、植物が吸収できないりん酸を生ずることはありません。

3.展望
この共同研究を通して、地域における未利用資源の有効利用と域内循環のモデルケースの構築、ならびに持続可能な社会の構築に貢献することが期待されます。

4.問い合わせ先
日本大学生物資源科学部
https://forms.gle/nuQgoi5M323v7gCj6

藤沢市下水道施設課プレスリリース
https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/gesui-si/press/fujimaru.html