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北里大学三陸キャンパスが学生食堂で深海の生物飼育研究を学生に公開――将来はHP上でバーチャル水族館も

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北里大学海洋生命科学部(岩手県大船渡市)では、今年10月より学生食堂に研究用水槽を設置し、深海生物の飼育研究を開始した。学生の研究学習意欲を向上させるためであり、貴重な生物の生態を食事しながら観察できる。今回の飼育研究は「サツマハオリムシ」「トウロウオハラエビ」「ユノハナガニ」などである。同学部の三宅裕志講師が海洋研究開発機構の研究船利用課題において、深海の熱水域の調査で採集した生物で、今後は水槽にカメラを設置し、HP上でバーチャル水族館も設置予定。

 北里大学海洋生命科学部の三宅裕志講師は、クラゲ類をはじめとするゼラチン質プランクトンの生態と深海生物の生態学を専門に研究している。中でも生物の飼育を通した研究を得意としており、深海生物飼育のスペシャリストである。
 1999年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の特別研究員として勤務し、北海道から沖縄、さらにパプアニューギニアやフィジーの熱水域や湧水域などの調査に参加。潜水調査船「しんかい6500」(※1)にもこれまでに何度も乗船し、水深5500メートルの世界を体験している。2004年からは新江ノ島水族館の展示飼育職員としてクラゲコーナーや深海コーナーを担当。2007年より同大講師に赴任した。

 北里大学大学院水産学研究科ではJAMSTECとの連携大学院講座の「深海生物学(客員講座)」があり、海洋生命科学部では3年次後期に「深海生物学」の講義がある。三宅講師は、深海生物学に関してより興味を持ち、理解を深めるためには、生物を身近に感じることが重要であるとして、深海生物の飼育研究を行っている。
 今回、三宅講師が飼育研究している深海生物は、今年の夏に行われた海洋研究開発機構の研究船利用課題航海にて採集したもの。

 深海生物を陸上で飼育するには、深海と同じように「暗黒」「低温」「貧酸素」「高圧」などの複雑な環境を再現しなければならない。さらに熱水周辺に住む生物の場合は高温の場所も作る必要がある。今回の飼育研究では、水槽内全体を低温にし、局部的に暖かい場所を作り、熱水環境を再現するなどの工夫を行っている。
 これらの研究用水槽を学生食堂に設置することで、研究の最前線を気軽に覗き、地球生命圏を支える生き物を学生が身近に感じることが出来る。今後はさらなる飼育水槽開発とともに、ネットワークカメラなどを利用して、深海生物の飼育状況を同大HP上で公開し、研究に役立てる予定である。

◆現在展示飼育研究中の深海生物の解説は文末の添付ファイルを参照

※1 しんかい6500:
 水深6500mまで潜ることができる潜水調査船。現在運航中の有人潜水調査船の中で、世界で一番深く潜ることが可能。1990年に完成し、日本近海に限らず、太平洋、大西洋、インド洋等で海底の地形や地質、深海生物などの調査を行い、2007年には通算1000回目の潜航を達成した。

▼本件に関する問い合わせ先
 北里大学海洋生命科学部 環境生物学講座水圏生態学研究室
 〒022-0101 岩手県大船渡市三陸町越喜来烏頭160-4
 TEL: 0192-44-1900(直通)
 http://www.kitasato-u.ac.jp/mb/

1768 サツマハオリムシ

1769 トウロウオハラエビ

1770 オオマユイガイ

1771 ネッスイハナカゴ属の一種

1772 ユノハナガニ