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還元酸化グラフェン上でのホモエピタキシャル成長による高結晶・高移動度グラフェン薄膜の実現(次世代電子デバイス応用に向けた新たな結晶化機構を発見)

還元酸化グラフェン上でのホモエピタキシャル成長による高結晶・高移動度グラフェン薄膜の実現(次世代電子デバイス応用に向けた新たな結晶化機構を発見)
東洋大学理工学部電気電子情報工学科根岸良太教授、岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎化学研究所)仁科勇太教授らの研究グループは、結晶成長技術によって還元型酸化グラフェン(rGO)をテンプレートとした薄膜の高結晶化・高移動度化を実現しました。安価かつ大量合成可能な酸化グラフェン(GO)を還元することで合成されるrGOは、高いスケーラビリティを有しており、透明導電膜、センサー、エネルギーデバイスなど幅広い応用が期待されています。一方で、還元後のrGO内に残存する酸素官能基や欠陥構造が電気伝導特性を低下させることが課題でした。本研究では、GO薄膜をエタノール雰囲気中で加熱還元を行うことで、rGO表面にグラフェンアイランドを結晶成長させ、薄膜全体の結晶性と電気特性を大幅に改善することに成功しました。本研究の成果により、グラフェンの結晶成長技術を用いた様々な次世代電子デバイスの実現を後押しすることが期待されます。本研究成果は、2026年5月30日付にて国際学術誌「Scientific Reports(Nature Portfolio)」にて公開されました。

■研究成果のポイント
・rGO表面にグラフェンアイランドが結晶成長することを明らかにしました。
・rGO表面におけるグラフェンアイランドの結晶成長は、螺旋成長と層状成長の2つの成長モードが存在
することを明らかにしました。
・グラフェンアイランドの結晶成長により、rGO薄膜に365cm2/V·s のHall移動度を実現しました。
・結晶成長したグラフェンの層は、テンプレートであるrGOの表面より高い結晶性・電気伝導特性を有す
ることを示唆する結果が得られました。

■詳細
これまで、GOの還元処理の雰囲気にメタンやエタノールなどの炭素源ガスを添加することで、還元酸化
グラフェン(rGO)内の“酸素官能基の脱離”に加え、“欠陥構造の修復”を行い、rGOの高結晶化を試みる研究が進められてきました。しかし、添加した炭素源ガスによってrGO表面にアモルファスカーボンが形成するという副反応の存在も確認されておりました。こうした、炭素源ガスのrGOに対する効果は、rGOの物性ひいてはグラフェンデバイス性能に大きく影響するにもかかわらず、rGOの高結晶化における表面形態の変化については、依然として十分に解明されていませんでした。

研究グループは、GO薄膜の還元温度およびエタノール供給量を系統的に制御しながら、ラマン分光、原子間力顕微鏡(AFM)、X線回折(XRD)、X線光電子分光(XPS)、ホール測定を組み合わせ、rGO薄膜の構造変化、表面形態、および電気伝導特性を詳細に解析しました。その結果、加熱還元過程には複数の段階的な高結晶化機構が存在することを示しました。先行研究で示されているように、低温領域(~1100℃)では酸素含有官能基の脱離が進行し、隠れていたsp²炭素ネットワークが露出することで結晶性が向上する段階、中温領域(~1200℃)では、エタノール由来の炭素前駆体による欠陥構造の修復と、炭素凝集体の形成という副反応が発生する段階が確認されました。

更なる高温領域(~1400℃)では、従来報告されていなかった新たな高結晶化機構として、rGO表面上でグラフェンアイランドが結晶成長する現象を発見しました。形成されたグラフェンアイランドは六角形状のエッジ構造を示し、層状成長(Layer-by-layer growth)や螺旋成長(Spiral growth)といった特徴的な成長モードを示しました(図1, 2)。これらのグラフェンアイランドは、結晶成長の下地となるrGOテンプレートとの層間相互作用によって配向し、高い結晶性を有することが明らかになりました。

また、グラフェンアイランドの形成に伴い結晶粒径が増大し、電気伝導特性も大幅に改善されました。Hall測定では、結晶性向上に伴ってHall移動度が直線的に増加し、最大365cm²/V·sという高いHall移動度を達成しました(図3)。これはrGO薄膜として極めて高い数値であり、電子デバイス材料としての大きな可能性を示しています。

さらに、グラフェンアイランドが多層に積層することによってシート抵抗の低減も確認されました。これはrGOの層よりも、電気伝導特性の優れたグラフェンアイランドの層が、主なキャリア輸送の経路として機能したためと考えられます。

■今後の展望
本研究成果は、GOを出発材料としながら、大面積かつ制御性良く高品質なグラフェン薄膜を形成でき
る新たな材料設計指針を示すものであり、グラフェンの次世代電子デバイスへの応用展開が期待されま
す。

■論文情報
論文タイトル:「Enhanced Crystallinity and Electrical Properties through Homoepitaxial Growth on Reduced Graphene Oxide Templates」
著者名:S. Kanda1, T. Yamashita1, S. Kurosu2, F. Sakamoto2, T. Hanajiri1,2, Y.Nishina3 & R. Negishi1, 2
1 東洋大学 大学院理工学研究科、2 東洋大学 バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター、3 岡山大学 異分野基礎科学研究所
ジャーナル名:Scientific Reports
出版社名:Nature Portfolio
DOI:10.1038/S41598-026-54930-1

■研究資金
本研究の一部はJSPS科研費(22K04865)、東洋大学井上円了記念研究助成、Bio-Nano Electronics Research Centreの援助を受けて実施しました。

■研究に関するお問い合わせ先
東洋大学 理工学部電気電子情報工学科
教授 根岸 良太(ねぎし りょうた)
E-mail negishi046@toyo.jp

岡山大学 学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)
教授(卓越教授) 仁科 勇太(にしな ゆうた)
E-mail nisina-y@cc.okayama-u.ac.jp

■本件に関する報道関係の方からの問い合わせ先
東洋大学 総務部広報課
TEL:03-3945-7571 MAIL:mlkoho@toyo.jp

岡山大学 総務部広報課
TEL:086-251-7292 MAIL:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

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