火星の海、32億年前に消失! ~21億年前以降にも局所的な湖環境が存在~
研究のポイント
- 長崎大学の実験水槽を用いて、火星の表面に見られるデルタ地形がどのような条件で形成されたのかを明らかにした。
- 海退でできたデルタ地形の分布と年代を調べた結果、38億年前から32億年前まで広大な海が存在していたことが明らかになった。
- 約21億年前以降にも小さな湖がまばらに存在し、太古火星における生命生息可能環境が、32億年前の海の消失以降も存続していた可能性が示された。

現在の火星は極寒で乾燥した環境にあり、地表に液体の水は存在しません。一方でNASAの衛星探査などにより、火星の地表にはデルタや川などの流水地形が多数見つかったことから、約38億年前には火星表面に液体の水が存在し、北部には広大な海が存在したと考えられています。しかし、海が消失したタイミングや、海の存在そのものについては議論が続いており、太古火星の水環境の歴史については未だに統一見解が得られていませんでした。
そこで長谷川准教授らの研究グループは、火星の表面に見られる「デルタ(川が海に流れ込む場所にできる地形)」に着目。武藤名誉教授が開発した長崎大学の実験水槽を用いた一連の実験により、火星に海が存在した裏付けを探るとともに、海の存在時期の解明に挑みました。その結果、火星表面に見られるデルタ地形ができる形成条件を調べ、大規模な海退*2でできるデルタ地形や、小規模な湖で水位上昇時にできるデルタ地形を特定することに成功しました。さらに同研究グループは、NASAの火星衛星探査画像(CTX*3、MOLA*4)を用いて、それらデルタ地形の分布調査と、クレーター解析*5に基づく年代測定を行いました。
その結果、38億年前から32億年前まで火星北半球に確かに広大な海が存在し、約32億年前に海が消失していたことが実証されました。火星の海はこれまで考えられていたより長い期間存在していたのです。さらに、約21億年前以降にも小規模な湖環境がたびたび出現していたことも明らかになりました。このことは、太古火星に存在していた生命生息可能環境は、約32億年前の海の消失以降も持続していたことを示しています。
この成果は、Nature Publishing Groupが発行する科学誌「npj Space Exploration」に2026年10月1日付け(日本時間10月1日18時)で掲載されました。
<用語>
注1)三角州(デルタ) : 海や湖の河口付近で川から運ばれた物質が堆積することでできる地形。
注2)海退 : 海面が低下し、海が陸側から沖側へ後退する現象。
注3)CTX : NASAの火星探査機Mars Reconnaissance Orbiter (MRO)に搭載されたカメラ。Context Cameraの略。火星表面を約6 mの解像度で広範囲に撮影している。
注4)MOLA : NASAの火星探査機Mars Global Surveyorに搭載されたレーザー高度計。Mars Orbiter Laser Altimeterの略。1ピクセル約200m。
注5)クレーター解析 : 対象領域内にあるクレーターの密度分布から年代を推定する方法。月のクレーターの年代分布に基づき、大きなクレーターが多く、クレーター密度が高い場所ほど古いという考えを基盤にしている。
<詳しい研究内容について>
https://www.u-presscenter.jp/wp-content/uploads/2026/09/20261001press.pdf
論文情報
論 文 名: Delta morphology reveals timings of early ocean regression and hydrologic shift on ancient Mars
掲 載 誌 : npj Space Exploration
著 者 : Ren Kito (鬼頭 蓮), Hitoshi Hasegawa (長谷川 精)*, Trishit Ruj (トリシット ルジ) *, Tetsuji Muto (武藤 鉄司), Gian Gabriele Ori (ジャン ガブリエレ オリ), Goro Komatsu (小松 吾郎) *責任著者
DOI : https://doi.org/10.1038/s44453-026-00056-7
本件に関するお問い合わせ
(研究に関すること)
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