インフラの老朽化や点検の担い手不足に対応、フィジカルAI教材を開発へ ― 法政大学・SSIL・パシフィックコンサルタンツ、NEDO「GENIAC」に採択 橋や下水道の点検データをAI・ロボットの学習・評価用の共通基盤に
本事業は、橋・上下水道などの点検記録や3次元データをインフラ点検向けのフィジカルAIの学習・評価に使えるAIレディデータとして整備していくものです。中心となる成果は、フィジカルAI(ロボットなどの機器を通じて、現実の空間で動作するAI)の学習・評価用のデータと継続提供の仕組みです。点検AIや自律型ロボット、ドローンの開発・評価をデータから支援します。
【本事業の背景】老朽化と担い手不足に、データ活用で向き合う
現在、全国の道路橋は約73万橋あり、そのうち建設後50年を経過した橋は約24万橋です。建設年度が判明している橋に限ると、その割合は約44%となっています(2026年3月末)。下水道管路は約50万km(2024年度末)に及び、一般行政部門に土木技師・建築技師がいない市区町村は25%にのぼります(2025年4月1日)。
また、現場に蓄積された記録は、形式や用語、管理先がそろわず、施設ごとの参照やAIの学習に活用しにくい状況です。法政大学ら3者は、人の知識と経験をデータとAIで支え、暮らしに欠かせないインフラを持続的に守る土台づくりに取り組みます。
出典:国土交通省「道路メンテナンス年報(令和7年度)」等。詳細は添付資料に記載。道路橋は橋長2m以上、下水道管路は都市下水路を除く。建設後50年という経過年数は、個々の施設の危険性や健全性を直接示すものではありません。
【本事業のポイント】現場の記録をAIデータへ。集めて終わりではない仕組みを
- 分散した点検記録を、AIが学べるデータへ
図面、台帳、点検写真、補修履歴を整理し、位置と構造物の情報で関連付けます。 - 実データで集めにくい条件を合成データで補完
照明の変化や水面反射などを再現し、特殊な環境での学習・評価に役立てます。 - データを集めて終わりにせず、更新・提供を継続
データ保有者と開発者をつなぎ、利用条件と品質を確認したデータを届ける仕組みを整えます。

(1)事業概要:位置・状態・特殊環境の3つのデータをつなぐ
現場の記録の形式・項目・用語、品質や利用条件を整理し、AIが学習・評価に使える状態(AIレディ)に整備します。対象となるデータは、次の3群です。
| データセット | 表す内容・整備するデータ |
| A 空間基盤 | どこに・どのような構造物があるか 全国広域の位置・形状の参照基盤と、選定した地域・区間の高精細な3次元データ。 |
| B 構造化インフラ点検 | どのような状態か・過去にどう対応したか 図面、台帳、点検記録、補修履歴を施設や部材ごとにたどれる形に整理。 |
| C 特殊環境学習 | 取得が難しい環境をどう学ぶか 下水道管の内部や橋の下部などの実データと、物理シミュレーションによる合成データ。 |
1)Aを土台に場所・構造物・記録を結び付ける
Aを共通の参照軸とし、施設・区間に対応するB・Cの情報は、位置と構造物を識別するIDで関連付けます。例えば、同じ橋の図面、点検写真、補修履歴をたどれるようにし、AIの学習だけでなく、点検計画や過去の対応の確認にも役立てることを目指します。
関連付けの細かさは元データによって異なり、すべてを小さな区画単位で精密に位置付けるわけではありません。下水道の調査映像はマンホール間の管渠区間に関連付ける方針です。詳細は添付資料に示します。
なお、全国広域の基盤は共通の位置参照のためのものであり、全国すべての施設の詳細形状や点検情報を整備するものではありません。
2)合成データは、取得しづらい条件の補完に用いる
合成データは、実データの代替ではありません。実際の調査で得た情報と、シミュレーションで再現した条件とを区別し、合成データを使った学習の有効性を実データで評価することを目指します。
3)3者の役割|研究・データ基盤・現場をつなぐ
法政大学の研究知見、SSILの空間情報を統合する技術、パシフィックコンサルタンツのインフラ実務と地方公共団体・管理者との連携を組み合わせ、データ整備から継続提供までを一体で進めます。
【主な役割】
・法政大学:データの構造化、位置・構造物との関連付け、品質評価の設計と技術監修
・SSIL:空間情報をつなぐデータ基盤の構築、検索・配信とシステム運用
・パシフィックコンサルタンツ:地方公共団体・インフラ管理者との調整、実データの収集、権利・利用条件の整理とデータ管理
(2)期待される効果
AI開発者によるデータ探索・整理の負担軽減と、点検記録の検索、損傷情報の抽出、特殊環境での認識技術の開発促進を目指します。地方公共団体やインフラ管理者が施設情報を参照しやすくすることで、点検計画や予防保全の検討を支えます。
点検時間や費用の削減、安全性の向上は期待される効果であり、実際の効果は利用する技術や適用条件に応じた検証が必要です。AI・ロボットの実環境での自律運用には、性能・安全性の検証が必要です。
(3)採択事業の基本情報
| 事業名 | ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/データエコシステムの構築等に関する研究開発(GENIAC) |
| 採択テーマ名 | インフラ点検効率化と自律型ロボット制御を支援するAIレディなハイブリッド空間・合成データセットの構築 |
| 実施者 | 学校法人法政大学/宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合/パシフィックコンサルタンツ株式会社 |
| 採択結果公表日 | 2026年7月2日 |
| 実施期間 | 2026年9月~2カ年の予定 |
事業名・採択テーマ名・実施者・採択結果公表日は、NEDO公表資料に基づきます。出典は添付資料に記載。
▼本件に関するお問い合わせ先
<研究内容に関すること>
・法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科
教授 今井 龍一
E-mail:imai@hosei.ac.jp
<取材・報道に関すること>
・法政大学総長室広報課
TEL:03-3264-9240
E-mail:pr@adm.hosei.ac.jp
・宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合
解析部(担当:小林・織田)
E-mail:infossil-geniac@ssil.jp
・パシフィックコンサルタンツ株式会社
経営企画部広報室(担当:前田・関根)
TEL:03-6777-3022
E-mail:pr-press@tk.pacific.co.jp