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千葉工業大学生命環境科学科・坂本泰一准教授らが共同研究でRNAアプタマーが標的分子を捕捉する仕組みを発見――抗体に代わる次世代分子標的医薬開発の基盤を確立

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このたび、JST課題解決型基礎研究の一環として、大阪大学、東京大学、千葉工業大学(特別研究員/野村祐介博士、工学部生命環境科学科/坂本泰一准教授が参加)、(株)リボミック、(株)創晶による共同研究が行われ、RNAアプタマーが標的分子を結合する仕組みを、構造解析によって明らかにした。この研究成果は、7月29日(英国時間)に英国科学雑誌「Nucleic Acids Research」のオンライン速報版で公開された。また、同誌の上位5%に相当する「Featured Article」にも選ばれた。

 RNAアプタマーは、たんぱく質などの標的分子に強く結合する核酸分子である。RNAアプタマーが結合したたんぱく質はその働きが特異的に妨害されるため、治療困難とされている疾患の治療薬となるものと期待されている。
 しかし、RNAは「マイナス」の静電気を帯びているため、「プラス」の静電気を帯びたたんぱく質でなければ強く結合できないと考えられており、多種多様なたんぱく質に対して強く結合するRNAアプタマーを自在に開発できるのかといった疑問の声もあった。
 
 同研究グループは今回、先に開発していたプラスとマイナスの引力だけではない力で結合するRNAアプタマーと、たんぱく質が結合した複合体の立体構造をX線結晶構造解析(※1)によって初めて明らかにした。その結果、RNA自身が持つしなやかな造形力を利用して標的たんぱく質の形に合わせた構造を作り出し、標的たんぱく質を捕捉することができることを見出した。
 
 この研究によって、アプタマーデザインの基盤が確立できたことから、これまで標的とされなかったたんぱく質に対してRNAアプタマーを作ることにより、抗体医薬に代わる次世代分子標的医薬(RNAアプタマー医薬(※2))が開発できることとなる。また、今回のRNAアプタマーを用いれば、医薬品用のヒト化抗体たんぱく質が、高純度かつ今までよりも簡単な方法で得られるため、抗体医薬の開発の発展にも役立つものと期待される。
 
 同研究は、大阪大学大学院工学研究科の森勇介教授らと共同で行われ、研究成果は、2010年7月29日(英国時間)に英国科学雑誌「Nucleic Acids Research」のオンライン速報版で公開された。また、同誌の上位5%に相当する「Featured Article」にも選ばれた。
 
 この成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られた。
 
◆戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
 研究領域:「生命現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」
  (研究総括:柳田敏雄 大阪大学 大学院生命機能研究科 教授)
 (※1)研究課題名:「タンパク質完全結晶創成」
     研究代表者:森 勇介(大阪大学 大学院工学研究科 教授)
     共同研究者:松村 浩由(大阪大学 大学院工学研究科 准教授)、
     安達 宏昭(株式会社 創晶 代表取締役社長)
 (※2)研究課題名:「多目的RNAナノセンサー・モジュレーターの開発」
     研究代表者:中村 義一(東京大学医科学研究所 基礎医科学部門 教授)
     共同研究者:坂本 泰一(千葉工業大学 工学部生命環境科学科 准教授)、
           宮川 伸(株式会社 リボミック 探索研究部長)
 研究期間:ともに平成17年10月~平成23年3月
 JSTはこの領域で、生命系科学技術の発展の原動力である未解明の生命現象の解析に資する新たな計測・分析に関する基盤的な技術の創出を目指している。
 
▼本件に関する問い合わせ先
 千葉工業大学 産官学融合課
 TEL: 047-478-0325