京都産業大学

京都産業大学神山天文台で理学部准教授、大学院生・学部生のグループが国内最高性能を誇る天体観測装置「線スペクトル偏光分光装置(LIne Polarimeter and Spectrograph)」の開発に成功

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京都産業大学・神山天文台では、理学部の池田優二 准教授が率いる研究開発グループ(池田准教授以下、大学院理学研究科博士前期課程2年生の新崎 貴之さん、博士後期課程1年の新中 善晴さん、理学部4年次生の糸瀬 千里さん)が、宇宙にある天体から来る光のさまざまな性質を、幅広くしかも同時に観測できる天体観測装置「LIPS(リップス)」を開発した。この装置は、国内の望遠鏡に装備されているものとしては最高性能を有し、世界的に見てもトップレベルの装置である。

 今回、開発に成功した装置LIPSは、宇宙にある天体から来る光のさまざまな性質を、幅広くしかも同時に観測できるという特徴がある。光は波としての性質を持っており、波の山と山の間が長い光は「赤く」、逆に山と山の間が短いものは「青く」見える(専門的には、波の山と山の間の長さを「波長」と言う)。LIPSは、目に見える光を数千色以上に分けて、しかも同時に観測することができる。これにより、天体がどのような早さで運動しているのか?あるいはどのような成分から出来ているのか?ということを詳しく知ることができる。しかも、LIPSは「色」だけではなく、「光の偏り具合」も同時に詳しく調べることができる。
 
 「光の偏り具合」とは何か。たとえば雪山でスキーをする際に雪面が眩しくないようにかける「偏光サングラス」は、雪に反射した太陽の光が特定の方向に偏っている(波の振動する方向が偏っている)ことを利用して、雪面で反射して目に届く光を暗くする働きがある。このような「光の偏り」を、専門的には「偏光」と言います。「光の偏り具合」を精密に調べることで、はるか彼方にあって望遠鏡を使っても直接は画像を得られないような星々の様子(特に、星の周りに存在するガスやチリの雲の形状など)を詳しく調べることができる。

 さまざまな「色」について細かい色の違いまで「光の偏り具合」を非常に精密に調べることができる天体観測機器は、国内の全ての望遠鏡を見回してもLIPSのみであり(国立天文台・すばる望遠鏡の装置をもしのぐ性能)、世界的に見ても、非常に高い性能を誇っている。同様な天体観測機器は世界的に見ても数台しかなく、また、このような観測装置のアイデアは、池田准教授らが開発を続けてきたLIPSに始まっており、まさにパイオニア的存在である。

■詳細 http://www.kyoto-su.ac.jp/department/sc/news/20111212_lips.html

2765 神山天文台/1.3m荒木望遠鏡に装備されたLIPS (手前の黒い箱状の機器)