東京薬科大学

東京薬科大学・東京大学・科学技術振興機構の共同研究チームが、微生物が互いに電子をやり取りする未知の「電気共生」を発見

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JST課題達成型基礎研究の一環として、JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究「橋本光エネルギー変換システムプロジェクト」(研究総括:橋本 和仁)の加藤 創一郎 研究員(現 産業技術総合研究所 研究員)と渡邉 一哉 グループリーダー(現 東京薬科大学 教授)は、微生物が導電性金属粒子を通して細胞間に電気を流し、共生的エネルギー代謝を行うことを発見した。

■概要 
 本プロジェクトでは、クリーンエネルギー分野において期待される微生物燃料電池の研究開発を行ってきた。微生物燃料電池はバイオマスから電気エネルギーを生産するプロセスとして、また省エネ型廃水処理プロセスとして有望であり、世界中で活発に研究開発が進められている。しかし、微生物がなぜ人工的な電極に電子を流す能力を持っているかについては不明であった。

 本研究では、環境中にも電極や電線が存在し、微生物が電子のやり取りをしているのではないかと考え、2種の土壌微生物(ゲオバクターとチオバチルス)が共生しているところに、環境中に普遍的に存在する導電性酸化鉄(マグネタイト)粒子を添加したところ、従来の共生的代謝に比べて代謝速度が10倍以上に上昇することを発見した。このことは、導電性酸化鉄中を電子が流れ、2種の微生物の代謝が促進されたことを意味している。

 環境中には多様な微生物が生息し、それらの間にはさまざまな相互作用があると予想されている。しかし、パスツールにより開発された単離・純粋培養技術を基盤に発展してきた現代の微生物学において、微生物間の相互作用に関する知見は非常に限られている。本研究の成果は、環境中の微生物の未知の共生関係を解き明かすものとして、また微生物燃料電池やバイオガス生産を高効率化するための基盤として、幅広くインパクトを及ぼすものと考えられる。

 本研究は、東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻 橋本研究室、および東京薬科大学 生命科学部 生命エネルギー工学研究室(渡邉教授)との共同で行われた。
 本研究成果は、米国科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」のオンライン速報版で2012年6月4日の週(米国東部時間)に公開される。

■本件の内容・事業に関する問い合わせや詳細はプレスリリース文書をご覧ください。