東京家政学院大学

東京家政学院大学人間福祉学科が、孤立死防止状況を調査――過去1年間、都内15施設で42名の孤立死を防止

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東京家政学院大学人間福祉学科高齢者福祉研究室(西口守教授)は、このたび都内450か所の特別養護老人ホーム、養護老人ホームにアンケートを実施。その回答から15施設(特養12、養護3)に42名の高齢者が孤立死寸前で入所されたことがわかった。

 急速に進む高齢化と独居高齢者が増加する陰で、孤立死の報道が目立っている。東京家政学院大学人間福祉学科では今年8月に都内の特別養護老人ホームと養護老人ホーム合計450か所にアンケートを実施し、218通(48.8%)の回答を得た。

 報道される孤立死の多くは親族以外との関係を断ち、能動的か受動的かは別として家屋の中で閉じこもり、状況の変化に対応できず、命を失っている。社会の大きな変化の中で、社会との関係を持つことができない人々の増大があり、深刻な社会問題、生活困難がその背景にあるとみられている。
 また、孤立死の多くは高齢者であるとの報道もあるが、その実態が把握されているわけではない。

 社会福祉施設としての養護老人ホームや特別養護老人ホームは、こうした問題といかに向き合うべきか、また実際どのように向き合っているのかを明らかにし、それぞれの機能をどのように社会問題や生活困難に提供すればいいのかを考える必要がある。
 介護問題に限らず、地域の生活問題にも対応してきた歴史的背景がある養護老人ホームや特別養護老人ホームは、改めてこの時代のなかでどのように地域の人々への安心につなげていくのかが問われているとも言える。

 人間福祉学科では以上のような問題意識に基づき、都内養護老人ホームや特別養護老人ホームでこの一年に対応した『孤立死寸前ケース』に関する調査を実施。この調査を通して、改めて生活の支援も担う高齢者福祉施設の有用性や有効性を明らかにした。

 218通の回答によると、「一人で暮らしている人や、家族だけで暮らしている人々が社会との積極的な接触を持たず、このまま放置されると死亡する可能性のあった状態」である孤立死寸前で入所した高齢者は、特別養護老人ホーム418施設のうち12施設で17名、養護老人ホーム32施設のうち3施設で25名となり、合計18施設42名が入所。男性は17名、女性が25名だった。

 回答のあった特別養護老人ホーム及び養護老人ホーム218施設に対する入所発生率は6.9%だった。15か所42名を発見したのは役所、ケアマネジャー、民生委員が大半で、不安定な生活から施設へ入所することで孤立死が防げていることが分かる。また、特別養護老人ホーム12施設の直近1ケースの介護保険の利用率は6割。入所者の4割が介護保険を利用しない、またはできないという実態が初めて明らかになった。

 介護保険の活用ができる特別養護人ホームと違い、養護老人ホームは措置施設として行政の指示を受ける。月額30万円ほどの措置費は一般財源であてられることから、費用の圧縮を求められる中で“措置控え”という状況も起こり、その結果、入所者の減少による施設の定員割れと裏腹に、貧困ビジネスへの流入、ホームレス化、あるいは孤立死へとつながることが危惧されている。

 自由回答には、「孤立死寸前を探すことは特別養護老人ホームの業務ではない」、「介護保険などのサービスの使い勝手(プロセス)が悪い」、「個人情報の縛り(プライバシーの扱い)」がネックとなっており、行政の側での仕組みつくりが必要」、「地域の中での“つながり”をどう作るか」、「マスコミは孤立死があったとしか報道しない。それを防ぐための活動・努力には触れない」などがあった。

 人間関係が希薄になることによる孤立は、様々な連携、たとえばヤクルトの宅配や電気・水道・ガスなどライフラインの地域担当者の情報を行政が「発見ルート」として整備できるかにかかってもいる。
 特別養護老人ホーム、養護老人ホームからの回答には、行政や民生委員がもっと独居高齢者に係わる必要があるというものもあった。

▼本件に関する問い合わせ先
 東京家政学院大学現代生活学部
 人間福祉学科高齢者福祉研究室 西口 守
 TEL: 042-782-4968
 E-Mail: mamoru@ kasei-gakuin.ac.jp
 〒194-0292 東京都町田市相原町2600