大阪工業大学

大阪工業大学の今春の学位記授与式に異色の2人――80歳の技術士とサウジアラビア留学生が「環境」をテーマに博士号取得

大学ニュース  /  学生の活動  /  大学院

  • ★Facebook
  • ★Twitter
  • ★Google+
  • ★Hatena::Bookmark

大阪工業大学(学長;井上正崇)は、3月23日(土)に学位記授与式を開催する。式では5人に博士号を授与する予定だが、その中に異色な経歴を持つ2人がいる。大阪府池田市で技術士事務所を営む妹尾一成さん(80)とサウジアラビア政府派遣留学生のスレイマン・ビファリさん(45)で、両名はそれぞれ「木質バイオマス炭化によるカーボンシンク効果の評価に関する研究」「ジッダ湾の水環境改善に関する研究」のテーマで環境に関する研究を行った。

 妹尾さんとスレイマンさんは、ともに工学研究科博士後期課程環境工学専攻に4年間(通常3年。妹尾さんは単位取得退学後、研究生としてさらに2年)在籍し、指導教授の石川宗孝教授(都市環境工学)をはじめ環境工学科の教授陣の協力を得て、博士論文を無事完成させた。

■妹尾一成さん 「木質バイオマス炭化によるカーボンシンク効果の評価に関する研究」
 妹尾さんは大阪に生まれ育ち、中学卒業後、苦学の末に29歳で大阪工業大学電気工学科を卒業。中外炉工業に30年以上勤め、数多くの炉の設計に携わった。50歳の時には技術士の資格を取り、同社を定年退職後は技術士事務所を開設。ごみ焼却炉や機械メーカーなどで技術コンサルタントを行っている。顧問先の排水処理施設のメーカーに研究調査で学生を連れてきていた縁で石川教授との出会いがあり、2007年4月、大阪工業大学に博士後期課程環境工学専攻が開設されたのと同時に同大の門をたたいた。
 博士論文では、廃木材などを回収して炭を作り土壌に施用することによって炭素を封じ込め、炭素を半永久的に固定化することでCO2削減につなげ、地球温暖化防止に役立てることを検証。同氏がこれまで培った技術と専門知識を効果的な炭化炉の設計に生かすことを目指し、社会全体で地球温暖化防止の啓発活動を続けていきたいと意欲を燃やしている。

■スレイマン・ビファリさん 「ジッダ湾の水環境改善に関する研究」
 スレイマンさんの出身地、ジッダは、サウジアラビアの最大都市の一つで、紅海沿岸の中心に位置している。紅海はもともと無数のコーラル(サンゴ礁)や海洋生物が生息するほど透明度が高く、多くのダイバーが訪れるなどマリンレジャーも盛んである。しかし近年、特にジッダ沿岸地域では人口増加や工場進出、輸送船の通行増加などに伴い、廃水処理施設の整備が追いつかず、大量の工業廃水が直接海に放出されるなど、深刻な環境汚染問題を抱えている。子どもの頃から海や自然を愛するスレイマンさんは、厚生省の研究員として主に微生物を研究していたが、この深刻な課題を解決するため、環境に関する文献を調べる中で水俣病の公害を克服した日本に着目。また、淀川環境をフィールドに水資源や廃棄物資源の循環・再利用の研究を行う大阪工業大学の取り組みが自分のやりたい研究テーマに一致していたため、留学を決意した。政府派遣奨学金を得、家族を引き連れて来日。帰国後は研究成果を生かし、5年でクリーンな海に戻す解決策を政府に提言したいと考えている。

********* ◆大阪工業大学学位記授与式 概要◆ ***********
1.日 時:2013年3月23日(土)10:00~11:00
2.場 所:大阪工業大学大宮キャンパス 総合体育館
(大阪市旭区大宮5-16-1)
※当日はインターネット中継も行います。詳細は大阪工業大学ホームページ( http://www.oit.ac.jp/japanese/live/live_net.html )をご覧ください。

▼本件に関する問い合わせ先
 大阪工業大学工学部環境工学科(石川教授)
 大阪市旭区大宮5-16-1
 TEL: 06-6954-4375(学科事務室)


4020 妹尾一成さん

4021 スレイマン・ビファリさん