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DNAを基質とするADPリボシル基転移酵素の基質複合体構造を解明 -- 京都産業大学

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京都産業大学総合生命科学部 津下英明教授と吉田徹研究助教は、DNAのguanineをADPリボシル化する酵素に着目し、基質であるguanineが結合した状態の酵素の構造を明らかにした。その結果、ADPリボシル基転移酵素は、基質がタンパク質(アミノ酸)でもDNA(guanine)でも、同じ仕組みを使って基質を認識することが分かった。

 翻訳後修飾酵素の一種であるADPリボシル化は、真核生物における損傷したDNAの修復やバクテリアの病原性など様々な生物学的過程に関与している。これまでADPリボシル化はタンパク質に対して生じるものと考えられてきたが、近年、DNAもまたADPリボシル化されるという証拠が数多く見つかってきた。しかし、DNAがどのようにADPリボシル化されるのかは全く分かっていなかった。総合生命科学部 津下英明教授・吉田徹研究助教は、DNAのguanineをADPリボシル化する酵素に着目し、基質であるguanineが結合した状態の酵素の構造を明らかにした。その結果、ADPリボシル基転移酵素は、基質がタンパク質(アミノ酸)でもDNA (guanine)でも、同じ仕組みを使って基質を認識することが分かった。本研究の成果は米国科学雑誌「The Journal of Biological Chemistry」のAccelerated Communications(特に新規性と意義、幅広い関心のある情報を含む論文)として、オンライン出版された。本研究では、ADPリボシル基転移酵素ScARPのguanine認識機構を明らかにしたが、他のDNAを基質とするADPリボシル基転移酵素DarTは一本鎖DNAを、PARPやpierisinは二本鎖DNAを、各々認識する。
 今後は、これらのADPリボシル基転移酵素による基質認識機構を明らかにすることで、ADPリボシル基転移酵素阻害剤、特に抗がん剤として機能するヒトポリADPリボシル基転移酵素(PARP)阻害剤の発展につながることが期待される。

  むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

関連リンク
●総合生命科学部 津下 英明 教授・吉田 徹 研究助教が、DNAを基質とするADPリボシル基転移酵素の基質認識機構を解明しました
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20180807_400n_news.html
●京都産業大学研究ブランディングサイト「生命とタンパク質の世界」
 https://www.kyoto-su.ac.jp/protein/
●タンパク質動態研究所
 https://www.kyoto-su.ac.jp/collaboration/ph/kikou_pr.html

▼本件に関する問い合わせ先

京都産業大学 広報部

住所

: 〒603-8555 京都市北区上賀茂本山

TEL

: 075-705-1411

FAX

: 075-705-1987

E-mail

kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp

20180918_press01.jpg (A)ScARPが促進するGDPのADPリボシル化反応

20180918_press02.jpg (B)ScARPに結合した基質GDPと基質類似体NADH。左は全体構造、右は基質結合部位の拡大図。ScARPは、基質GDPをARTT-loop(Trp159-Glu164)によって認識している。つまり、Gln162による2本の水素結合・Trp159によるπ-スタッキング、が基質GDPの認識に重要である。赤線は反応の結果生じる新たな結合を意味する