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【研究成果のポイント】
◆要時生成型二酸化塩素水溶液※1(MA-T(R) ※2)が新型コロナウイルスを98%以上消毒できることを実証。
◆MA-T(R)は、株式会社エースネットが開発した除菌・消臭剤のシステムで、日本のほぼ全ての航空機のほか、多くのホテルでも利用されている。2015年に大阪大学の研究によって、反応すべき菌やウイルスが存在する時にのみ、必要な量だけ二酸化塩素の成分を水の中で生成する「要時生成型二酸化塩素水溶液」であることが明らかに。
◆これまでにMA-T(R) は、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルスにも有効であることを実証済。
◆新型コロナウイルス感染症の治療にあたる医学部附属病院や、医療従事者の子どもを預かる学内保育園にMA-T(R) を用いて感染から守るほか、マスクや防護服の除菌を行うことで医療崩壊を防ぐ手立てに。
◆大阪大学では医療現場等を守る取組のほか、大きな可能性を秘めるMA-T(R) に関連する様々な事業をOI機構やOPERA※3 を通じて展開していく。
◎概要
大阪大学では、革新的酸化剤である「要時生成型二酸化塩素水溶液(MA-T(R) )」のメカニズム解明・応用化研究を進め、昨年9月から独立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA/代表:井上豪 薬学研究科教授 )によって実用化研究を進めています。
このたび、研究グループはMA-T(R) が新型コロナウイルスに対しても1分間の接触試験で有効に消毒できることを確認しました(図1)。詳細な消毒の効果は、今後の実験においてさらに検証される予定です。
MA-T(R) は、株式会社エースネットが17年の歳月をかけて開発した除菌・消臭剤のシステムで、ANA、JAL、PEACHなど日本のほぼ全ての航空機で採用され、多くのホテルでも利用されています。羽田国際線ターミナルの100ヵ所以上のトイレでは除菌・消臭を目的に噴霧も行われています。
これまでに、MA-T(R) の消毒効果については、0.01%含む水溶液が、2002年、2012年にそれぞれ流行したSARSコロナウイルスおよびMERSコロナウイルスに対して有効に消毒できることが同じく松浦教授によって実証されていました。
新型コロナウイルスに対しての効果も明らかとなり、医療現場における二次感染の防止のほか、マスクや防御服に対しても消毒して直ぐに使うことのできる液剤として役立つことが期待されます。
◎MA-T(R) の大きな可能性(メカニズム解明、応用、実用研究)
MA-T(R) の除菌・消臭効果に関する化学的なメカニズム解明については、大阪大学先導的学際研究機構創薬サイエンス部門(部門長:土井健史 薬学研究科・教授)で行われてきました。亜塩素酸イオンを主成分とするMA-T(R) は、反応すべき菌やウイルスが存在する時にのみ、有効成分である二酸化塩素を必要な量だけ「水の中」で生成するという「要時生成型二酸化塩素水溶液」であることも明らかにしたほか、この化学的性質を活用し、21世紀のドリーム反応と考えられてきたメタンの酸化反応の発見にも至っています。
昨年9月にはOPERAにも採択されました。MA-T(R) の主成分であり、欧米の飲料水にも含まれている亜塩素酸イオンを、
(1)強く活性化すれば、新しい化学反応を発見できるだけでなく、
(2)中程度に活性化すれば、新たな高分子材料が開発でき、
(3)弱く活性化すれば、安全かつ有効な空間除菌のためのプロトコルの開発が可能になると考え、
(2)中程度に活性化すれば、新たな高分子材料が開発でき、
(3)弱く活性化すれば、安全かつ有効な空間除菌のためのプロトコルの開発が可能になると考え、
MA-T(R) の安全性や安定性に関する化学的知見を集積しています。なお、化学方面の応用化研究でも企業導出に繋がる研究は、時期を同じくして設立された大阪大学オープンイノベーション機構(OI機構/機構長:金田安史 統括理事)と連携しているところです。
◎研究の背景
MA-T(R) は、株式会社エースネットが17年の歳月をかけて開発した除菌・消臭剤のシステムで、ANA、JAL、PEACHなど日本のほぼ全ての航空機で採用され、多くのホテルでも利用されているほか、羽田国際線ターミナルの100ヵ所以上のトイレでは除菌・消臭を目的に噴霧も行われています( https://www.anatc.com/wp-content/uploads/2019/03/News-Release-18-29.pdf )。
2015年にMA-T(R) を用いた創薬に関する相談が大阪大学先導的学際研究機構創薬サイエンス部門にあり、欧米の飲料水にも含まれている亜塩素酸イオンを主成分とするMA-T(R) が、反応すべき菌やウイルスが存在する時にのみ、必要な量だけ二酸化塩素の成分を水の中で生成する「要時生成型二酸化塩素水溶液」であることを明らかとし、その安全性や安定性の秘密を化学的に解き明かしました。さらにはその化学的性質を活用して、21世紀のドリーム反応と考えられてきたメタンの酸化反応の発見にも至っています(大阪大学先導的学際研究機構分子光触媒共同研究部門 大久保敬大阪大学高等共創研究院・教授、Angew.Chem.Int. Ed.(2018), Chem. Commun.(2019))。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2017/20171211_1
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20190423_1
これらを受け、2019年度からOPERAに採択され、酸化制御共創コンソーシアムの中で複数の企業と連携してMA-T(R) のさらなる応用化に向けた基礎研究が追究されるとともに、大阪大学微生物病研究所や医学部附属病院とも連携して、MA-T(R) を用いた安全かつ有効な空間除菌のためのプロトコルの開発について基礎研究が進められています。5年後には海外にて院内感染を制御する臨床試験も計画されているところです。
なお、本OPERA事業は、文部科学省の令和元年度「オープンイノベーション機構の整備事業」との連携型として採択されていますが、OI機構も同時に設立され、同機構の中でもMA-T(R) の応用化に関する事業化が検討されています。
今年1月に、新型コロナウイルスによる最初の死者が武漢で発生してから、全世界の感染者は367万人を数え、25.4万人※4 を死に至らしめています。日本でも、最初の感染者の報告があってから僅か3か月間で患者数1万5千人、死者551名※4 を数え、猛威を振るっています。これに対して、大阪大学微生物病研究所松浦善治教授らは、MA-T(R) が0.01%含まれた水溶液が、2002年、2012年にそれぞれ流行したSARSコロナウイルスおよびMERSコロナウイルスを1分以内に消毒できることを明らかとしたほか、新型コロナウイルスに対しても有効であり、98%以上消毒できることを実証しました(図1)。詳細な実験データについては今後の検証によって明らかとされる予定です。
◎医療従事者を守る取組
医学部附属病院、歯学部附属病院、大阪大学微生物病研究所とも連携して、MA-T(R) を用いた安全かつ有効な空間除菌のためのプロトコルの開発について基礎研究が進められています。5年後には海外にて院内感染を制御する臨床試験も計画されているところですが、これを前倒しして、院内感染を防ぐ取組にできないかと模索しているところです。また、感染拡大防止に配慮した医療体制構築に向けて噴霧器の設置も提案しています。
また、医療現場における二次感染を防ぎ、マスクや防護服に対しても消毒してすぐに使うことのできる液剤として役立てることで、医療崩壊を防ぐ手立てとしたいと考えています。
さらに、現在、医療従事者の子どもたちに制限して保育している学内保育園に対しても、どの消毒剤よりも安全で安心なMA-T(R) を導入して大切な子供たちと保育士さんらを感染から守る試みをはじめています。医学部附属病院と歯学部附属病院で働く若い医療関係者の子供たちを新型コロナウイルスから守る活動を通じ、若い医師や看護師らが最先端の医療技術を必要として全国から集まってくる患者やその家族と一緒に全力で病気と闘うことのできる体制を整備しています。
◎本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
MA-T(R) に関する大阪大学における一連の研究成果により、既に除菌消臭に対して効果のあるクレベリン(R) (大幸薬品工業株式会社)に含まれている二酸化塩素の成分を、ガスを発生させずに水の中でのみ生成しながら除菌・消臭の効果を発揮するメカニズムを解明しています。これは、要時生成型二酸化塩素水溶液といい、反応すべき相手となるウイルスや菌が存在しなければ主成分である亜塩素酸イオンの水溶液として存在し、安全性、安定性に極めて優れた除菌・消毒剤といえます。新型コロナウイルスに対しての効果も明らかとなり、医療現場における二次感染の防止のほか、マスクや防御服に対しても消毒して直ぐに使うことのできる液剤として役立つことが期待されます。
◎特記事項
本研究成果は株式会社エースネットの高森清人氏、柴田剛克氏らが17年の歳月をかけてMA-T(R) を開発する過程で得られたもの、および、大阪大学との共同研究で得られたものであり、現在進行形のJST研究成果展開事業 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)研究推進事業の一環として行われている成果を含みます。
◎用語説明
※1 要時生成型二酸化塩素水溶液
反応する相手が存在し、必要な時に、必要な量だけ水の中で二酸化塩素の成分を生成するシステム。
※2 MA-T(R)
要時生成型二酸化塩素水溶液のシステムの名称。
※3 OPERA
独立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラムの略称。大阪大学は、2019年9月に「安全な酸化剤による革新的な酸化反応活性化制御技術の創出」の事業で採択された。
※4 WHOが発表する新型コロナウイルス感染症統計情報から本文内に記載のあるCOVID-19 の感染患者数等の統計情報は、以下のWebページで発表されているWHOの日報(2020年5月7日時点のもの)を掲載している。
https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200507covid-19-sitrep-108.pdf?sfvrsn=44cc8ed8_2
大学・学校情報 |
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大学・学校名 大阪大学 |
URL https://www.osaka-u.ac.jp/ |
住所 大阪府吹田市山田丘1-1 |
学長(学校長) 西尾章治郎 |