京都産業大学

【京都産業大学】世界最高解像度の地球シミュレータで金星大気中の自発的な波の励起を初めて再現 -- 国際学術誌「Nature Communications」に掲載

大学ニュース  /  先端研究

  • ★Facebook
  • ★Twitter
  • ★Google+
  • ★Hatena::Bookmark

京都産業大学理学部 高木征弘教授は、神戸大学、奈良女子大学、東北大学との共同研究において、金星の大気の流れをシミュレーションする大気大循環モデル「AFES-Venus」を、地球シミュレータを用いて世界最高解像度で走らせ、小規模な波の自発的な励起を再現した。

 金星は分厚い硫酸雲によって全体を覆われており、大気内部の運動についてはほとんど解明されていない。今回、金星大気を世界最高解像度で数値シミュレーションすることにより、熱潮汐波という惑星規模の波動から大気重力波の自発的励起が生じることを初めて示し、そのメカニズムの解明を行った。「AFES-Venus」は過去に観測された金星大気のさまざまな現象を再現している点でも、今回シミュレートされた現象が実際の金星で発生している可能性が高いと考えられる。
 今後は、本研究で新たに発見された小規模な大気重力波やその励起過程が、金星探査機「あかつき」によって観測されることが期待される。金星に近づくタイミングでは、高分解能の画像が取得できるため、小規模な波の構造を捉えられる可能性があり、励起された波の働きをモデルや観測でさらに詳しく調べること、特にデータ同化の手法を活用することで、金星気象学が革命的に進むと期待される。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

<関連リンク>
・金星大気中の自発的な波の励起を初めて再現 -地球シミュレータを用いた世界最高解像度のシミュレーション-
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_release/20210618_345_release_ira01.html
・理学部 高木 征弘 教授
 https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/sc/takagi-masahiro.html

▼本件に関する問い合わせ先

京都産業大学 広報部

住所

: 〒603-8555 京都市北区上賀茂本山

TEL

: 075-705-1411

FAX

: 075-705-1987

E-mail

kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp

s001.jpg 図1:鉛直速度(カラー)とジオポテンシャル高度の擾乱(等値線)のスナップショット:(a)高度70kmでの経度緯度断面図、(b)赤道での経度高度断面図。等値線で示す惑星規模の熱潮汐波による温位面の歪みから、カラーで示す細かい大気重力波が自発的に励起されている。暖色が上昇流、寒色が下降流を表す。(Nature Communications誌掲載論文の図を一部修正。CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

s002.jpg 図2:大気重力波の励起メカニズム:(a)熱潮汐波によって形成された加速・減速領域によって大気が圧縮され、鉛直運動から大気重力波が励起される。(b)熱潮汐波によって温位面が山(もしくは谷)のように歪み、山岳波のように鉛直流から大気重力波が励起される。

s003.jpg 図3:(a)鉛直運動量フラックスと(b)東西風の加速、東西風速の擾乱(等値線)の合成図:(a)高度70kmでの経度緯度断面図、(b)赤道での経度高度断面図。等値線で示す惑星規模の熱潮汐波の加速・減速領域から、カラーで示す細かい大気重力波が自発的に励起され、熱潮汐波による加速・減速を打ち消す働きをするとともに、鉛直運動量を輸送し、上空での加速・減速をもたらしている。太陽直下点を中心に移動させて、時間平均を行った図。(Nature Communications誌掲載論の図を一部修正。CC BY4.0 http