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【京都産業大学】筑波大学、気象研究所、京都産業大学の共同研究により2019/20年の記録的暖冬はインド洋・太平洋の複合効果が原因だったことが判明

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筑波大学、気象研究所、京都産業大学の研究グループは、2019/20年の東アジアにおける暖冬発生要因について、熱帯大気-海洋からの影響に着目し、観測値を反映させた再解析データと数値モデルを用いて調査した。

2019年12月~2020年2月の日本の平均気温は統計開始以降最も高く、記録的な暖冬であった。熱帯のエルニーニョ現象が暖冬を引き起こすことはよく知られているが、この年にエルニーニョ現象は発生していなかった。本研究では2019/20年の東アジアにおける暖冬発生要因について、熱帯大気-海洋からの影響に着目し、観測値を反映させた再解析データと数値モデルを用いて調査した。
暖冬をもたらした直接的な要因は、東アジアモンスーンの弱化に対応して日本上空に存在する気圧の谷が弱まったこと(高気圧偏差)であった。数値モデル実験を行った結果、海洋大陸(インドネシアやその周辺)領域において対流活動(降水)が平年よりも抑制されたことで偏西風の蛇行を生み、この高気圧偏差が形成されたことが示された。さらに別の数値モデル実験結果から、海面水温が平年よりも高くなっていた熱帯インド洋西部と熱帯中央太平洋で上昇流が強化された結果、海洋大陸付近ではそれを補うように下降流が卓越し、対流活動が抑制されたというメカニズムが示された。
つまり、東アジアの暖冬をもたらした海洋大陸領域における対流活動の抑制は、インド洋西部の昇温に対応する「正のインド洋ダイポールモード現象」と中央太平洋の昇温に対応する「エルニーニョモドキ現象」の組み合わせ効果から説明できることが分かった。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

<関連リンク>
・2019/20年の記録的暖冬はインド洋・太平洋の複合効果が原因だった
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/biology-environment/20210915140500.html
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_release/20210628_345_release_ira01.html
・京都産業大学 理学部 高谷 康太郎 教授
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/sc/takaya-kotaro.html

▼本件に関する問い合わせ先

京都産業大学 広報部

住所

: 〒603-8555 京都市北区上賀茂本山

TEL

: 075-705-1411

FAX

: 075-705-1987

E-mail

kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp

s001.jpg 図1 LBM実験結果 (a)熱帯対流活動(非断熱加熱)偏差の3極子構造すべて、(b)インド洋西部のみ、(c)海洋大陸領域のみ、(d)中央太平洋のみをLBMに与えた時の850hPa気温(陰影;℃)と250hPa流線関数(等値線;106 m2s-1)の応答。紫色の枠は非断熱加熱偏差を与えた領域。(b)、(c)、(d)の中では、(c)「海洋大陸領域のみ」の結果が日本上空において最も高気圧性循環や高温傾向が大きい。

s002.jpg 図2 AGCM実験結果 (a)全球、(b)インド洋西部のみ、(c)海洋大陸領域のみ、(d)中央太平洋のみ、の海面水温偏差をそれぞれAGCMに与えた時の降水量(陰影;mm day-1)と850hPa気温(等値線;℃)の応答。紫色の枠は偏差を与えた領域。インド洋西部のみを与えた実験でも、全球実験同様に、海洋大陸付近の積雲対流抑制や日本の高温偏差が再現される。一方で、海洋大陸領域のみの場合、同領域で積雲対流は十分に抑制されず、気温についても観測とは逆の低温傾向となった。

s003.jpg 図3 2019/20年の暖冬に対する熱帯インド洋・太平洋からの影響。青矢印は遠隔的な対流の抑制、黒破線矢印は波の伝播を表す。