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名城大学が高分解能融解曲線分析法による新型コロナウイルスオミクロン株とデルタ株の同時識別法を開発

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名城大学(名古屋市天白区)薬学部衛生化学研究室の神野透人教授らが新型コロナウイルス オミクロン株とデルタ株を同時に識別できる高分解能融解曲線(HRM)分析法を開発しました。神野教授らが新型コロナウイルス変異株の簡単で迅速な識別法を確立したことについては2021年5月12日の本学記者会見で発表されています。第6波の到来が懸念される中、オミクロン株によるクラスターの迅速な特定など、感染症対策への活用が期待されます。

 薬学部衛生化学研究室 神野教授らのグループは、新型コロナウイルス オミクロン株とデルタ株を同時に識別できる高分解能融解曲線(HRM)分析法を開発しました。

 11月下旬に南アフリカで初めて報告されたオミクロン株(B.1.1.529系統)は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインに15個の変異をもち、感染・伝播性、抗原性の変化が懸念されることから、WHOはこの株を懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に分類しています。我が国においても、2021年12月8日現在で4名の感染が確認されており、感染拡大の防止に向けて、検査体制の確立が喫緊の課題となっています。
 このような背景から、厚生労働省は、我が国の新型コロナウイルスがほぼデルタ株に置き換わっていることを踏まえ、「デルタ株でないものはオミクロン株の可能性がある」として、デルタ株のPCR検査(L452R)を実施し、陰性の場合には厚生労働省に報告するよう都道府県に事務連絡を発出しました。
 一方、東京都は、N501YおよびE484Aの2つの変異に基づくオミクロン株識別法を独自に開発し、さらに、デルタ株の主な変異であるL452Rと合わせて3種類の変異を検査することによって、変異株の発生状況を把握することとしています。(2021年12月3日 東京都報道発表資料「オミクロン株PCR検査開始(2705報)」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/12/03/23.html)

 神野教授らは、デルタ株の識別法として既に実績のあるHRM法を用いて、オミクロン株、デルタ株と野生型株を同時に識別できる画期的な方法の開発に成功しました。
オミクロン株、デルタ株に特徴的な変異を含む領域をPCRで増幅して融解曲線を測定することにより、添付画像(2)のように3つの株を容易に識別することができます。第6波の到来が懸念される中、オミクロン株によるクラスターの迅速な特定など、感染症対策への活用が期待されます。

本研究の一部は、「2021年度 名城大学新型コロナウイルス対策研究プロジェクト」および「公益財団法人大幸財団 2021年度第31回自然科学系学術研究助成金」により実施したものです。

【参考文献】
1. Aoki A, Mori Y, Okamoto Y, Jinno H. (2021) Development of a genotyping platform for SARS-CoV-2 variants using high-resolution melting analysis. J Infect Chemother. 27: 1336-1341.
2. Aoki A, Adachi H, Mori Y, Ito M, Sato K, Okuda K, Sakakibara T, Okamoto Y, Jinno H. (2021) A rapid screening assay for L452R and T478K spike mutations in SARS-CoV-2 Delta variant using high-resolution melting analysis. J Toxicol Sci. 46: 471-476.

●HRM分析法の確立に関する本学サイトの記事はこちら
https://www.meijo-u.ac.jp/sp/meijoresearch/feature/covid19.html (特集「変異種検出の新技術」)
https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_24843.html (ニュース記事「薬学部衛生化学研究室が新型コロナウイルス変異株の簡単、迅速な識別法を確立」)
https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_26546.html (ニュース記事「名城大学 新型コロナウイルス対策研究プロジェクト」 2021年度も薬学部の2件が選ばれる」)

●本件の研究に関する問い合わせ先
 名城大学薬学部薬学科
 神野 透人(ジンノ ヒデト)教授: jinno@meijo-u.ac.jp


▼本件に関する問い合わせ先

名城大学渉外部広報課

住所

: 愛知県名古屋市天白区塩釜口1-501

TEL

: 052-838-2006

FAX

: 052-833-9494

E-mail

kouhou@ccmails.meijo-u.ac.jp

図1.png (1)オミクロン株およびデルタ株 スパイクタンパク質受容体結合ドメインの主な変異

図2.png (2)オミクロン株、デルタ株に特徴的な変異を含む領域をPCRで増幅して融解曲線を測定することにより、3つの株を容易に識別することができる