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【京都産業大学】抗体医薬品の安定供給を実現するHspa5プロモーターを用いた新たな抗体発現系を開発 -- 英国科学雑誌「Scientific reports」(オンライン版)に掲載

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京都産業大学生命科学部 潮田亮准教授らの研究グループは、チャイニーズハムスター卵巣細胞から抗体を発現させる際に、Hspa5プロモーターを用いることで従来の高発現プロモーターに比べて抗体生産性を約2倍向上できることを解明した。今後、安定した抗体産生が実現できるだけでなく、癌や新型コロナウイルス(COVID-19)などの疾患に対する創薬研究にも寄与できることが期待される。

 CHO細胞を用いた抗体発現において、従来用いていたCMVやhEF1αといったプロモーターの発現量は、培養の後半において減少するという問題があった。
 今回、京都産業大学生命科学部の潮田亮准教授、種村裕幸客員研究員らの研究グループは、高発現かつ培養後半まで抗体遺伝子の転写量を維持できるプロモーターの取得を目的に、hspa5遺伝子のプロモーター「Hspa5p」を用いることで、これまでの高発現プロモーターに比べ抗体生産性が約2倍向上し、CHO細胞の培養の後半でも抗体の生産量が維持されることを見出した。
 潮田准教授は、「近年、抗体医薬品に注目が集まっており、抗体自体の需要が高まっている。そのため、抗体の安定供給は重要な課題である。抗体はタンパク質で出来ており、培養細胞で生産する場合は、出来るだけ細胞に負担をかけずに生産する工夫が必要となる。今回、Hspa5pを利用することにより、細胞自体の負担を軽減しつつ大量生産するためのユニークで画期的な方法を提案出来たと思う。抗体医薬品の安定供給を実現し、より多くの人の治療に役立てば嬉しい」とコメントしている。

 この研究成果は、2022年5月24日(日本時間)に英国ネイチャー・パブリッシング・グループの科学雑誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。


むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

関連リンク
・抗体医薬品の安定供給を実現するHspa5プロモーターを用いた新たな抗体発現系を開発
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2022_ls/20220526_400a_ronbun.html
・京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科 潮田 亮准教授
 https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/ls/ushioda-ryo.html
・潮田研究室ホームページ
 https://ushioda-lab.com/

▼本件に関する問い合わせ先

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潮田准教授(左)_種村客員研究員01.JPG 研究成果を発表する京都産業大学生命科学部潮田准教授(写真左)と種村客員研究員(写真右)

20220524_01_th.jpg トランスクリプトーム解析によるHspa5プロモーターの取得 抗体の発現量の高い遺伝子のほとんどが培養後半に発現量が低下するのに対し、hspa5遺伝子が培養後半に発現量が向上することがトランスクリプトーム解析によって示された。

20220524_02.jpg Hspa5プロモーターの抗体生産への活用 プロモーター長を最適化したHspa5プロモーターを抗体発現に用いることで、コントロールプロモーター(hEF1αp)と比較して各種抗体サブクラスの培養14日目の抗体生産が2倍程度に向上した。