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「たかが捻挫」じゃない!足首の捻挫 関節の安定化には最低2〜6週間かかる可能性 ~捻挫後の靭帯回復をエコーで追跡した世界初の臨床研究を発表~(北里大学)

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北里大学 医療衛生学部の河端将司講師(責任著者)、大学院医療系研究科 博士課程2年の内田悠登さん(筆頭著者)らの研究チームは、くまざわ整形外科(熊澤祐輔医師)、コニカミノルタ株式会社らと共同で、足首の捻挫において靭帯の安定性が回復するまでの期間を超音波画像で追跡評価した世界初の研究成果を発表しました。この研究成果は、2025年3月22日付で、国際整形外科ジャーナル Journal of Experimental Orthopaedics に掲載されました。

■研究の背景と目的
足関節(足首の関節)の捻挫は、スポーツ現場で最も多く発生する外傷のひとつですが、明確な競技復帰の基準がないまま復帰する例が多く、再発率は50%を超えるとされています。本研究では、初回の足関節捻挫患者101名を対象に、受傷から回復に至るまでの関節の安定性変化を評価するため、エコー(超音波検査)を用いて経時的に追跡しました。

 ▼論文URL: https://doi.org/10.1002/jeo2.70204

■研究の内容と成果
ストレステスト(関節に特定の方向から負荷をかける検査)中の足関節の不安定性(靭帯のゆるみ)をエコーで測定したところ、
 ・ Grade 1(靱帯の損傷はあるが断裂はない)では約2週間
 ・ Grade 2および3(靭帯の部分断裂および完全断裂)では6週間程度
をかけて、健側(外傷がない側の足)と同等レベルまで回復していく傾向が見られました。
この結果は、従来の「1週間で競技復帰可能」とされる一般的な考えに対して、靭帯の構造的な安定性の回復にはより長い期間を要することを示唆する重要な発見です。

■社会的な意義
足首の不安定性を軽視したまま競技に復帰することで、膝・股関節・腰などへの二次的な障害を引き起こす可能性も指摘されています。本研究は、「見えない靭帯の回復過程」を"見える化"する新たな医療的アプローチであり、将来的な再発や重症化の予防に貢献するものです。

■研究者のコメント
今後の展望について、河端将司講師は、「エコーで関節の状態を定量的に可視化することに加え、AIによる診断補助を活用することで、より正確な復帰判断ができるよう研究を進めている。捻挫を繰り返すことなく安全に競技復帰できるよう、最適な復帰時期の提案を目指したい」と話しています。

■問い合わせ先
【研究に関すること】
 北里大学 医療衛生学部
 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
 講師 河端 将司(かわばた まさし)
 e-mail:mkawaba@insti.kitasato-u.ac.jp

【報道に関すること】
 学校法人北里研究所 広報室
 TEL:03-5791-6422
 e-mail:kohoh@kitasato-u.ac.jp