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【名古屋大学】カラオケ感覚で漫才を演じられる「漫才カラオケ」開発!画面の指示に従うだけでプロのようなボケ・ツッコミを体験

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【本研究のポイント】
・画面の指示に従うだけで、漫才の未経験者でも2人組で漫才を演じることができる「漫才カラオケ」を開発した。
・漫才ネタの台詞や演じ方を画面上に提示することで、ユーザはネタを暗記する必要なく、漫才特有の間や抑揚などで漫才の実演を体験できる。
・漫才を観て楽しむだけでなく「演じて楽しむ」という新しいエンタテインメントの創出につながる。
・カラオケ店への導入などを通じて、従来のカラオケ楽曲と同様に、ネタの権利を持つ漫才師らに収益が入る仕組みが生まれる可能性もある。

【研究概要】
 名古屋大学大学院工学研究科の小松 駿太 博士前期課程学生、窪田 智徳 助教、小川 浩平 准教授らの研究チームは、未経験者でも漫才を演じ、聴衆の笑いを引き出すことを可能にする漫才実演支援システム「漫才カラオケ」を提案・開発しました。
 漫才を演じることは、ネタの暗記や、笑いを引き出すための表現技術(間や抑揚など)が必要なため、容易ではありません。本システムでは、漫才ネタの台詞に加え、抑揚・感情表現・動作・タイミングといった非言語情報もカラオケ画面のように提示することで漫才実演を可能にします。

 漫才カラオケを実際に使用してもらう実験により、未経験者でもスムーズに漫才を演じることができ、聴衆はその漫才を面白く感じられることを確認しました。さらに、漫才を実演した参加者から「聴衆を笑わせることは気持ちよかった」、「自分が面白い人間であるかのような錯覚を覚えた」といった実演の楽しさを示唆するコメントも得られました。

 本研究は、カラオケや飲み会などの場で、漫才を「演じて楽しむ」新しいエンタテインメント体験の創出につながります。例えば、プロの漫才師のネタを演じる体験ができる応用が考えられます。漫才カラオケが将来的にカラオケ店などに導入されれば、従来のカラオケ楽曲と同様に、ネタの権利を持つ漫才師や作家へ収益が還元される仕組みが生まれることも期待できます。
 
 本研究成果は、2つの学会で発表されました。
・エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2025(対話発表賞を含む5つの賞を受賞)
・The 24th IFIP International Conference on Entertainment Computing

【研究背景】
 漫才は日本で人気の演芸ですが、その楽しみ方は主に「鑑賞」することでした。一方で近年、M-1グランプリのアマチュア参加者が増加するなど、自ら「演じる」ことへの関心も高まっていることがうかがえます。また漫才を演じることが、コミュニケーション能力の向上につながる可能性も報告されています。
 しかし、漫才を演じることは、ネタの暗記や、笑いを引き出すための表現技術(間や抑揚など)が必要なため、容易ではありません。
そこで本研究は、未経験者でも漫才を演じ、聴衆の笑いを引き出すことを可能にする漫才実演支援システム「漫才カラオケ」の実現を目指しました。


【研究内容と成果】
 本研究では、漫才ネタの台詞や演じ方を提示することで未経験者でも漫才を演じることを可能にする漫才カラオケを開発し、実際に未経験者が漫才を実演できるかを検証しました。

 漫才カラオケではツッコミ役とボケ役の2人のユーザに対して、以下の情報を画面上にリアルタイムに提示します。
l 台詞:発話する内容をツッコミ役・ボケ役に分けて提示
l 抑揚:台詞の音程を文字の縦位置(5段階)で提示
l 感情:喜怒哀楽の4種類を文字フォントや視覚エフェクト(怒りマークなど)で提示
l 動作:台詞と関連付いた主要な動作を動作カードで提示し、すべての動作を背景の動作提示アバタの動画で提示

 画面上では台詞や動作カードが右から左へ流れ、2 人のユーザは台詞や動作カードが画面左のタイミングバーにかかったときに発話や動作を行うことで、漫才特有の間で漫才を演じることができます。

 漫才カラオケを実際に使用してもらう実験(参加者10人)により、未経験者でも漫才を楽しくかつ少ない負担で実演できることが分かりました。また、「聴衆を笑わせることは気持ちよかった」、「自分が面白い人間であるかのような錯覚を覚えた」といった漫才実演の楽しさを示唆するコメントも得られました。さらに、その漫才を鑑賞した聴衆からも、実演が「面白い」、「上手だ」と肯定的に評価され、実験中は実際に笑いも起きていました。これらの結果から、漫才カラオケを用いることで、未経験者でも漫才を演じられ、聴衆の笑いを引き出せることを確認できたと考えます。

【成果の意義】
 本研究は、カラオケや飲み会などの場で、漫才を「演じて楽しむ」新しいエンタテインメントの創出につながると考えられます。例えば、プロの漫才師のネタを演じる体験ができる応用が考えられます。今後は、レクリエーション施設やカラオケ店へのコンテンツ導入のほか、コミュニケーション能力向上を目的とした教育・研修プログラムへの応用も期待されます。
 さらに、漫才カラオケが将来的にカラオケ店などに導入されれば、漫才ネタの権利者に収益が還元される仕組みが生まれる可能性もあります。また漫才以外にも、本システムのような非言語動作も提示する発話支援システムは、プレゼンテーション練習などに応用できる可能性があると考えられます。
 一方で、プロの漫才師など第三者が創作したネタをシステムに用いる際には、著作者の権利を侵害しない範囲(論文中の実験は学術目的に限定して研究室内で実施) で使用するか、適切な権利処理を行う必要があると考えます。
 また、漫才カラオケの応用を進める際には、文化的な側面での考察が不可欠です。楽曲においては、他者の作品をカバーしたりカラオケで歌ったりすることは一般的ですが、漫才において同様の文化は現状ほとんど見られません。漫才師や作家が、自身が創作したネタを他者が演じることをどう受け止めるかは現時点では未知数です。ネタの創作には多大な時間と労力が注がれているはずで、既存のネタを用いた応用では、創作者の考えを無視してはならないと考えます。
 本研究が、漫才文化における新たな楽しみ方を提案し、その魅力をより高める一助となることを期待します。

【論文情報(学会発表)】
雑誌名:エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2025論文集
論文タイトル:漫才カラオケ:未経験者でも漫才を演じることを可能にする
漫才実演支援システム
著者:小松駿太、窪田智徳、佐藤理史、小川浩平(全て本学関係者)
URL: https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/records/2003647

雑誌名:Entertainment Computing - ICEC 2025
論文タイトル:Manzai Karaoke: A Real-Time Visual Guidance System for Assisting Japanese Double Act Performance.
著者:Shunta Komatsu, Tomonori Kubota, Satoshi Sato, Kohei Ogawa(全て本学関係者)
URL: https://doi.org/10.1007/978-3-032-02555-5_16


▼本件に関する問い合わせ先

名古屋大学総務部広報課

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: 052-558-9735 

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E-mail

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