東京薬科大学

東京薬科大学が、皮膚の脂質代謝が乾癬様皮膚炎と全身の炎症に関与することを発見――乾癬の新たな治療法開発に期待

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東京薬科大学の深見希代子教授、金丸佳織大学院生、中村由和講師らの研究グループは、皮膚の脂質代射が乾癬様皮膚炎と全身の炎症に関与することを発見した。同研究成果は、乾癬に対して皮膚の脂質代謝が治療のターゲットになるという新たな視点を提供するもので、新たな治療薬の開発につながることが期待される。7月17日(英国時間)に「Nature Communications」で公開された。

 乾癬は皮膚炎の一種であり、欧米では全人口の2-3%の患者数がいるとされ、日本でも患者数が増加傾向にある皮膚疾患である。乾癬の発症にはインターロイキン-17 (IL-17)というタンパク質が皮膚で過剰に産生されることが関与している。

 このたび、東京薬科大学の深見希代子教授、金丸佳織大学院生、中村由和講師らの研究グループは、生まれつき脂質代謝酵素の一つを皮膚で欠損した遺伝子改変マウスを作製し、このマウスの皮膚ではIL-17の過剰産生を伴う炎症が見られることを発見した。今回見られた皮膚炎症はヒトの乾癬に類似した特徴を示しており、実際にヒトの乾癬患者皮膚において、この脂質代謝酵素の量が減少していることもわかった。また、皮膚で過剰に産生されたIL-17は血液中にも放出され、血液中の白血球数の増加や発熱などの全身性の炎症を引き起こすことも見出した。

 同研究成果は、乾癬に対して皮膚の脂質代謝が治療のターゲットになるという新たな視点を提供するもので、新たな治療薬の開発につながることが期待される。また、IL-17の過剰産生は関節リウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患の発症にも関わっており、皮膚の脂質代謝異常がこれらの疾患の発症に関与している可能性も提起する。

 同研究は内閣府・最先端・次世代研究開発支援プログラムなどの支援のもとで行われたもので、その研究成果は2012年 7月17日(英国時間)に英国オンライン科学雑誌「Nature Communications」で公開された。

■本件の内容・問い合わせや詳細はプレスリリース文書をご覧ください。

3362 図  ヒト乾癬患者皮膚では脂質代謝酵素(PLCδ1)が減少する