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玉川大学脳科学研究所 -- 人々は直感的に利他的に振る舞う 利他的な人ほど背外側前頭前野の皮質が薄いことを発見 -- 米国の科学雑誌“米国科学アカデミー紀要(オンライン版)”に論文を発表

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玉川大学脳科学研究所(東京都町田市/所長:木村實)の山岸俊男(やまぎしとしお)特別研究員(一橋大学特任教授)、高岸治人(たかぎしはると)助教、Alan Fermin(アラン・ファーミン)研究員、李揚(りよう)研究員、松本良恵(まつもとよしえ)研究員、アラヤ・ブレイン・イメージングの金井良太(かないりょうた)代表取締役らは、20代から50代までの男女411名を対象に熟慮的意思決定に関係すると考えられている背外側前頭前野の皮質の厚さと利他行動の関連を調べた。実験の結果、利他的な人ほど両側の背外側前頭前野の皮質が薄いことが明らかになった。また、戦略的な意思決定が要求される課題の成績が高い人ほど利己的であることが明らかになった。この結果は、人々は直感的(非戦略的)に利他的に振る舞っており、利他的な衝動を熟慮により抑え込む人たちが利己的に行動していることを示している。本研究成果は、米国の科学雑誌“米国科学アカデミー紀要(オンライン版)”に2016年5月3日に掲載された。

【掲載論文名】
 Cortical thickness of the dorsolateral prefrontal cortex predicts strategic choices in economic games
(背外側前頭前皮質の厚さは経済ゲームにおける戦略的決定を予測する)

 災害復興の際のボランティア活動や慈善団体への募金といったように、他者に対する利他行動は頻繁に見ることができる。他者に対する利他行動は社会規範を考慮して取られる熟慮的な行動であるのか、それとも自動的かつ自発的に生じる行動であるのかという問いは近年大きな注目を集めており、幅広い分野において研究が行われてきた。これまで2つの立場を支持する結果が示されてきたが、どちらの立場が正しいのかは未だ決着はついていない。そこで本研究では、20代から50代までの幅広い年齢の男女411名を対象に、熟慮的な意思決定に関係すると考えられている背外側前頭前野の皮質の厚さをMRI装置によって調べ、利他行動を測定する2つの経済ゲーム(最後通告ゲームと独裁者ゲーム)における行動の比較を通して検討した。
 その結果、背外側前頭前野の皮質が厚い人は、利己的行動が結局は自己利益を損ねる可能性のある最後通告ゲームでは利他的に行動するのに対し、そうした可能性のない独裁者ゲームでは利己的に振る舞うこと、また、背外側前頭前野の皮質が薄い人はどちらのゲームでも利他的に振る舞うことが明らかにされた。また、同様の差は、戦略的な意思決定が要求される課題で高い成績を示す人とそうでない人の間にも見られることが明らかになった。本研究の結果は、自動的・直感的になされる利他行動が、将来の利益を熟慮することで抑えられ、その結果利己的行動が取られることを示している。

※添付PDFには、詳細と実験の内容・結果などが記載してあります。

▼研究内容に関する問い合わせ先
 玉川大学 脳科学研究所
 特別研究員 山岸俊男(やまぎし としお)
 TEL: 090-7383-4466
 E-mail: tyamsgishi@lab.tamagawa.ac.jp

▼取材に関するお問い合わせ先
 玉川学園教育企画部広報課  
 〒194-8610 東京都町田市玉川学園6-1-1
 TEL: 042-739-8710 
 E-mail: pr@tamagawa.ac.jp