昭和大学

チーム医療教育の“全国モデル”を目指す──文科省「医療人GP」を受け構築された、昭和大学の「学部横断カリキュラム」

大学ニュース  /  教育カリキュラム

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昭和大学では、文部科学省の「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」(医療人GP、平成18年度~20年度)の支援を受けて、平成18年度から「チーム医療の有用性を実感する参加型学習」の教育事業を展開。全国でも類を見ない、チーム医療学習のための大規模なカリキュラムを構築、実施している。

 これからの医療は、「チーム医療」により、多くの医療スタッフが連携・協力して患者中心の医療を積極的に支援することが社会から求められている。しかし、従来の医療人教育では医療系の各学部(医学部、薬学部、歯学部、保健医療系学部など)の専門的教育が中心で、チーム医療学習のカリキュラムを積極的に取り入れている大学はほとんどないのが現状だ。

 昭和大学は、薬学部、医学部、歯学部、保健医療学部(看護学科、理学療法学科、作業療法学科)の4学部と、関連施設として8附属病院を持つ医系総合大学である。1年次は山梨県富士吉田キャンパスで4学部の学生が学部を越えて寝食を共にする全寮制が採用され、2年次以降は東京都旗の台キャンパスの薬学部、医学部、歯学部、看護専門学校、大学病院が併置された環境で、他学部の学生と共に学習している。

 このように、昭和大学はチーム医療学習にふさわしい環境を整備しており、大学の教育理念でも、学部の枠を超えて協力、連携し、医療人としての意識を共有し、それぞれの専門性を理解できる医療の担い手の育成を目指している。

 文部科学省の医療人GPの支援は、上記のような医系総合大学としての昭和大学の特色を生かし、チーム医療で活躍できる医療人を育成するための学部教育を促進する大きな推進力となった。1年生からの段階的なさまざまな学部横断型、参加型のカリキュラムを通して、チーム医療を構成する各職能の専門性を理解し、適切なコミュニケーションにより、患者の思いや医療チームの協力・協調の必要性を認識できる学生の養成を実施している。

【チーム医療教育の概要】
 チーム医療で活躍できる医療の担い手を継続的な学習を通して養成するため、全学部、附属医療施設、学外の病院・診療所、地域保険薬局、福祉施設などの協力のもと、学部合同のグループ討議や実習、病院や地域での体験学習などの参加型学習を各学年で実施している。

 学年が進むに従い、医療人としての倫理観や態度などの医療人マインドの醸成から、専門性の高い学習へ移行するようにカリキュラムを構成している。すなわち、1年生は「共通基盤の構築」をテーマに「早期体験学習」「チーム医療の基盤」の2ユニット(科目)、2年生は「共同作業の開始」をテーマに「診療の流れを知る*」「福祉の現状を知る*」の2ユニット、3年生は「専門性の相互理解」をテーマに「チーム医療による薬物治療」「救急医療・外科医療と薬剤師*」の2ユニット、計6ユニット(科目)だ。*の3ユニットは現在、新しく6年制となった薬学部学生を対象とした医療・福祉現場のチーム医療を学ぶ科目だが、これらも学部横断科目にすることを計画している。

 これらユニットの中でも、1年生の富士吉田キャンパスと3年生の旗の台キャンパス・横浜キャンパスで実施される(「チーム医療の基盤」と「チーム医療による薬物治療」)、4学部約600人の学生が参加するPBLチュートリアル(Problem-based learning:問題基盤型学習)といわれる小グループ学習は、その規模、内容、チーム医療学習の有用性において、国内最大規模、最先端のものといえる。

 学部混合の約70グループに分かれ、1年生では医療倫理や福祉、健康に関わるシナリオ、3年生では代表的な患者症例のシナリオが提示される。学生は3~4週にわたってグループ討議と自学自習を組み合わせ、協力してシナリオに含まれる問題点や患者の病状や背景を解析するとともに、チームとしてできる最善の対応策や治療法・ケアを提案する。学部横断型のPBLチュートリアルを繰り返すことにより、問題抽出・解決能力、コミュニケーション能力、自学自習の習慣などとともに、チーム医療の進め方やルールも身に付けていく。

 今後、卒後研修まで含めたチーム医療のカリキュラムを整備し、昭和大学の理念の実現を目指し、卒業後には誰もが円滑に医療チームを形成し、協調して患者のために積極的に活躍できる医療人を養成する計画だ。

※参考: 昭和大学薬学部医療人GP webサイト
 http://www10.showa-u.ac.jp/~pharm/gp.html

▼本件に関する問い合わせ先
 昭和大学 薬学部
 病態生理学 木内
 TEL: 03-3784-8000(代表)