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中央大学などが、脳表面から光で直接脳血流変化を計測する新技術を開発――開頭手術中の感覚機能の高精度リアルタイムモニタリングにミニブタ実験で成功

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中央大学研究開発機構(東京都文京区)の檀一平太教授らの研究グループはこのたび、脳表面からの「ダイレクト光トポグラフィー」を開発し、ミニブタを用いた実験で、世界で初めて脳機能計測に成功した。この実験では、ミニブタ脳内の鼻の感覚地図を、光を用いて血流変化とし、3mmの高精度で可視化。この研究成果により、開頭手術中の言語、運動、感覚機能などの高精度リアルタイム脳血流モニタリングの実現が期待される。

 中央大学(研究開発機構 檀一平太教授)、自治医科大学(先端医療技術開発センター PD宇賀美奈子氏、渡辺英寿教授)、および京都産業大学(総合生命科学部 齋藤敏之教授)らの共同研究グループは、世界に先駆け、大脳皮質表面からダイレクトに光で脳の血流反応を計測し、脳活動を高精度の2次元マップとして表現する手法の開発に成功した。

 これまで、頭の表面に複数の光源と受光センサーを配置し、センサーの情報をもとに脳血流の変化を脳表面上の分布として2次元画像として表示する「光トポグラフィー」という技術は実用化されていたが、空間解像度が2cm程度で(3cm格子状プローブ配置の場合)、脳以外の皮膚組織などからの信号混入の可能性があった。
 一方、今回、開発に成功した「ダイレクト光トポグラフィー法」では、脳の表面に複数の光源と受光センサーを5mm間隔で配置し、約3mmの高精度で、異なる位置の脳活動を分離することが可能になった。
 今回の実験では、麻酔下で開頭手術中のミニブタの鼻の異なる位置(上部、中部、下部)に電気刺激を与えた。この場合、脳の体性感覚野の異なる位置(前部、中部、後部、約8mm間隔)で脳神経細胞が活動することが判っている。この脳神経細胞の位置を調べた上で、ダイレクト光トポグラフィー法による計測を行ったところ、鼻の電気刺激位置に応じた脳の体性感覚野の位置で、脳の血流反応が起こることが実証された。

 これまで、開頭手術中に患者に発話してもらって言語野を同定する等、大脳皮質から脳血流変化を計測したい事例があっても対応は困難だったが、同研究グループの開発したダイレクト光トポグラフィー技術は、こういった要請に応える技術であることが期待される。今後、ミニブタによる基礎実験を進め、ヒトの脳神経外科手術中の脳機能モニタリングへの臨床応用実現を目指していく。
 この研究成果は、米国の科学雑誌「NeuroImage(ニューロイメージ)」 オンライン版(1月11日付け)に掲載された。なお、研究の詳細についてはウェブサイト( http://brain-lab.jp/wp/?p=775 )にて閲覧できる。

▼本件に関する一般の方の問い合わせ先
 檀一平太(だん いっぺいた) (中央大学 理工学部 人間総合理工学科/研究開発機構 教授)
 〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27
 TEL: 03-3817-7272
 E-mail: dan@brain-lab.jp

▼本件に関する報道関係の方の問い合わせ先
 加藤裕幹(かとうゆうき)(中央大学研究支援室)
 〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27
 TEL: 03-3817-1603
 E-mail: k-shien@tamajs.chuo-u.ac.jp