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昭和大学薬学部の中村明弘教授らの研究グループが、薬の苦みを蛍光の強さで判定する手法を開発 -- 子どもが飲みやすい薬の開発に期待

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昭和大学(東京都品川区)薬学部 基礎医療薬学講座 薬剤学部門の中村明弘教授、原田努准教授、藤田吉明講師らの研究グループはこのたび、従来の方法では測定が難しかった水に溶けにくい薬の苦みを評価する手法を開発。ヒトの十二指腸の上皮細胞由来の培養細胞に薬剤を加えたところ、苦みの強さに伴うカルシウム濃度変化に応じて発光の強さが変わることを確認した。将来的には苦みを定量的に評価することで、小児などが飲みやすい薬の開発が期待される。

 小児の薬物治療においては、薬の苦みが服薬困難や拒否を起こす大きな問題となっている。しかしながら、小児の味覚の特性についての知見は乏しく、その現状は不明な点が多い。その理由の一つとして、薬の味見は被験者の安全および倫理上の課題が多く、加えて客観的・定量的な評価が難しいことが挙げられる。特に水に溶けにくい非電荷薬物の場合は、現行の人工脂質膜を用いた味覚センサーでは原理的に測定が困難である。
 そこで昭和大学の研究グループは、臨床現場で苦味による服薬拒否の声が多く、また測定が困難な非電荷薬物である抗炎症薬「プレドニゾロン」について、培養細胞を用いたカルシウムイメージング法を用いて苦味の評価を試みた。


【研究方法】
 カルシウムイメージング法とは、カルシウムイオンと結合することで蛍光を発する色素を使用して、細胞などを着色し、画像情報として観測を可能にする手法である。
 苦味物質が受容体に結合するとそのシグナルが伝わり、細胞内のカルシウム濃度が上昇する。そこで同グループは苦味を感じる受容体を有するヒトの十二指腸由来上皮細胞HuTu-80細胞にさまざまな濃度の薬物を添加し、細胞内のカルシウム濃度を検出試薬で可視化することによりその応答を蛍光顕微鏡で観察した。薬物は水に溶けにくい非電荷薬物である「プレドニゾロン」ならびに代表的苦味薬物である抗マラリア薬「キニーネ」について検討した。


【研究結果および考察】
 1mMのプレドニゾロンを細胞に添加すると、同濃度のキニーネに比べその効果は弱いものの、短時間で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。
 薬物の応答性の強弱は、細胞に発現している苦味受容体の種類や発現量が影響すると考えられるが、蛍光の強さの変化で苦味を評価できるこの手法は、プレドニゾロンの苦味応答を検出するツール開発への足がかりになると考えられる。
 今後はプレドニゾロンに応答する特異的な苦味受容体の同定を行うとともに、光の強さを数値化し、より単純な系で苦味の強さを測定できるようにする。また、大人と小児により苦味を感じる受容体の量や種類が異なる可能性を考慮し、年齢などの条件に合わせたセンサー装置を開発し、小児が飲みやすい薬の開発に資することを目指す。



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学校法人 昭和大学

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