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昭和大学(東京都品川区/学長:小出良平)の小野賢二郎教授(医学部脳神経内科学部門)、辻まゆみ教授(薬理科学研究センター)を中心とする研究グループは、アルツハイマー病の病因蛋白(アミロイドβ)の高分子オリゴマーであるプロトフィブリルが神経細胞膜を傷害する機序の一端を解明し、米国実験生物学会連合学術誌『The FASEB Journal』オンライン版に掲載されました。本研究成果は現在世界中で行われているアルツハイマー病の疾患修飾薬(※1)開発に応用できる可能性があります。
アルツハイマー病(AD※2)は認知症の中で最も多い疾患であり、その発生率は人口の高齢化とともに増大しています。 ADの主な病理学的特徴には、アミロイドβ蛋白(Aβ)からなる老人斑、およびタウからなる神経原線維変化が挙げられます。
Aβは主に40または42アミノ酸残基を含むAβ1-40とAβ1-42がヒトにおいて産生されますが、Aβ1-42はより凝集性が高く毒性が強いためAD病態の進行にとって特に重要であると考えられています。一量体であるAβモノマーは凝集して、低分子オリゴマー、そして、プロトフィブリルのような高分子オリゴマー、そして最後に成熟線維を形成すると考えられています。これらの凝集体はAD患者の脳において神経機能障害を引き起こしますが、最近、早期あるいは中間凝集段階であるオリゴマーがADの病因において重要な役割を果たすことが示唆されています(関連文献1)。
Aβは主に40または42アミノ酸残基を含むAβ1-40とAβ1-42がヒトにおいて産生されますが、Aβ1-42はより凝集性が高く毒性が強いためAD病態の進行にとって特に重要であると考えられています。一量体であるAβモノマーは凝集して、低分子オリゴマー、そして、プロトフィブリルのような高分子オリゴマー、そして最後に成熟線維を形成すると考えられています。これらの凝集体はAD患者の脳において神経機能障害を引き起こしますが、最近、早期あるいは中間凝集段階であるオリゴマーがADの病因において重要な役割を果たすことが示唆されています(関連文献1)。
今回の研究では、Aβ1-42の高分子オリゴマーが細胞膜上での活性酸素(ROS※3)生成と脂質過酸化によって仲介される膜損傷を介して神経毒性を発揮し、その結果、膜流動性の低下、細胞内カルシウム調節異常、膜の脱分極、およびシナプス可塑性障害をもたらすことを明らかにしました。これらの作用は低分子Aβでは弱いことが分かりました。最近、第二相臨床試験で、高分子Aβオリゴマー抗体が、プラセボ(※4)と比較して早期ADにおける認知低下を有意に遅らせ、アミロイド蓄積を減少させたことが報告されていますが、我々の結果、すなわち、高分子Aβオリゴマーが膜損傷を介して神経毒性を誘発するという研究結果は、高分子AβオリゴマーがADの有効な疾患修飾療法の治療標的になる可能性があることが示唆されました。これらの知見は、ADにおいてアミロイド斑を除去または分解するように開発された疾患修飾療法の最近の失敗に照らして重要な知見であると思われます。
本研究は、本学医学部脳神経内科学部門、薬理科学研究センター(木内祐二教授ら)、歯学部口腔生理学(井上富雄教授ら)、富山大学医学薬学研究部システム情動科学(西条寿夫教授ら)、金沢大学ナノ生命科学研究所(中山隆宏准教授)、京都大学iPS細胞研究所(井上治久教授ら)、カリフォリニア大学ロサンゼルス校神経学(デービッド・B テプロフ教授)との共同研究にて行われました。
■発表論文名
Taro Yasumoto, Yusaku Takamura, Mayumi Tsuji, Takahiro Watanabe-Nakayama, Keiko Imamura, Haruhisa Inoue, Shiro Nakamura, Tomio Inoue, Atsushi Kimura, Satoshi Yano, Hisao Nishijo, Yuji Kiuchi, David B. Teplow, Kenjiro Ono. High-molecular-weight amyloid β1-42 oligomers induce neurotoxicity via plasma membrane damage. FASEB J, [Epub ahead of print]
邦題:「高分子Aβオリゴマーは細胞膜傷害を介して神経細胞毒性を発揮する」安本太郎、高村雄策、辻まゆみ、中山隆宏、今村恵子、井上治久、中村史朗、井上富雄、木村篤史、矢野怜、西条寿夫、木内祐二、デービッド・B・テプロフ、小野賢二郎
doi:10.1096/fj.201900604R
■関連文献
1. Ono K. Alzheimer's disease as oligomeropathy. Neurochem Int. 2018;119:57-70.
■語句説明
※1 疾患修飾薬:病理学的変化が進む過程に直接作用することにより、疾患の再発率を抑制したり,進行を遅らせたりする作用をもった薬剤のこと
※2 アルツハイマー病AD(Alzheimer's disease):認知症をきたす疾患の中で一番患者さんが多いと言われている。脳の神経細胞が減って脳が萎縮してしまうために、症状が現れ、徐々に進行する病気。
※3 活性酸素ROS(Reactive Oxygen Species):大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称。過剰に作られ、その状態が続くと細胞が傷つき、早い老化や病気をもたらしてしまう。
※4 プラセボ:医薬品の真の効果を試験するためなど、乳糖など生理作用のない物質で製した薬のこと
■昭和大学医学部内科学講座脳神経内科学部門HP
http://showa-u-neurology.com/
▼研究に関する問い合わせ先
昭和大学医学部内科学講座脳神経内科学部門 小野 賢二郎
TEL:03-3784-8710
E-mail:onoken@med.showa-u.ac.jp
▼本件に関する問い合わせ先(本件リリース元)
学校法人 昭和大学 総務課(広報担当)
TEL:03-3784-8059
【お詫びと訂正】「研究に関する問い合わせ先」の電話番号に誤りがありました。正しくは「03-3784-8710」です。ここにお詫びして訂正します。(2019/05/14 14:40)
大学・学校情報 |
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大学・学校名 昭和医科大学 |
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URL https://www.showa-u.ac.jp/ |
住所 品川区旗の台1-5-8 |
昭和医科大学は医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の4学部が揃う「医系総合大学」です。創立以来、“常に相手の立場に立ってまごころを尽くす”という意味の「至誠一貫」を建学の精神に掲げ、思いやりのある人間性豊かな医療人の育成を最大の使命として、教育と研究に取り組んでいます。患者さんに誠意を持って接し、患者さん本位の医療を提供すること。そして忘れてはならないのは医療人同士の思いやりです。昭和医科大学には、この医療人同士が心を通じ合わせて治療にあたる「チーム医療」の学びがあります。 1年次の富士吉田キャンパスでの全寮制では4学部の学生が一緒に生活し、医療人として大切なコミュニケーション能力と相手を思いやる心を育みます。そして2年次より専門科目を学びながら、継続的に最終学年まで体系的なチーム医療教育を実践しているのが大きな特色です。 |
学長(学校長) 久光 正(ひさみつ ただし) |