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学校法人昭和大学(東京都品川区/理事長:小口勝司)が設置する昭和大学先端がん治療研究所(東京都品川区/所長:鶴谷純司)の今村知世准教授、鶴谷純司教授、上野直人ディレクター、国立がん研究センター中央病院、慶應義塾大学医学部、理化学研究所を中心とする研究グループは、世界初の前向き無作為化比較試験により「乳がんタモキシフェン療法におけるCYP2D6遺伝子型に基づく個別化治療は不要」との結論を導き、その研究成果が米国臨床腫瘍学会(ASCO)機関誌『Journal of Clinical Oncology』に2月20日付で発表されました。なお本研究は、同誌の論説にてハイレベルのエビデンスとして取り上げられました。
ホルモン受容体陽性乳がんの標準治療薬であるタモキシフェンは、肝臓にある酵素CYP2D6により体内で活性代謝物に変換されます。CYP2D6の活性は遺伝的素因によって高い人と低い人が存在し、活性が低い患者ではタモキシフェンの治療効果が劣るといった後ろ向き研究結果が米国の研究グループより2005年に発表されて以来、タモキシフェンの治療効果に及ぼすCYP2D6遺伝子型の影響について世界中で数多くの後ろ向き研究が行われてきました。しかしながら各研究での対象患者背景や遺伝子検査試料など種々の因子が同じではないことから一定の結果が得られておらず、相反する研究結果が乳がんに対するタモキシフェン治療に混乱をもたらしていました。CYP2D6低活性遺伝子保有者割合には民族差があり、日本人では約7割に及びます。
本研究チームは、乳がんタモキシフェン療法におけるCYP2D6遺伝子型に基づく個別化治療は不要との結論を導くとともに、日本人に多い低代謝活性遺伝子型は治療上の不利益とはならないことをハイレベルのエビデンスとして世界に発信しました。
本臨床試験は、文部科学省の次世代がん研究戦略推進プロジェクト(がん薬物療法の個別適正化プログラム)および日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業として全国54施設の参加により実施され、昭和大学医学部外科学講座乳腺外科部門の中村清吾教授らからも症例が登録されました。
■発表論文
・雑誌:J Clin Oncol, 2020 Feb 20;38(6):558-566. doi: 10.1200/JCO.19.01412.
・タイトル:CYP2D6 genotype-guided tamoxifen dosing in hormone receptor-positive metastatic breast cancer (TARGET-1): a randomized, open-label, phase2 study(ホルモン受容体陽性転移・再発乳がんに対するタモキシフェンのCYP2D6遺伝子型に基づく個別化投薬と固定用量の比較研究).
・著者:Kenji Tamura, Chiyo K. Imamura, Toshimi Takano, Shigehira Saji, Takeharu Yamanaka, Kan Yonemori, Masato Takahashi, Junji Tsurutani, Reiki Nishimura, Kazuhiko Sato, Akira Kitani, Naoto T. Ueno, Taisei Mushiroda, Michiaki Kubo, Yasuhiro Fujiwara, Yusuke Tanigawara(田村研治、今村知世、高野利美、佐治重衡、山中竹春、米盛勧、高橋將人、鶴谷純司、西村令喜、佐藤和彦、木谷哲、上野直人、莚田泰誠、久保充明、藤原康弘、谷川原祐介).
■論説
・雑誌:J Clin Oncol, 2020 Feb 20;38(6):525-528. doi: 10.1200/JCO.19.03119.
・タイトル: Pharmacogenomics and Endocrine Therapy in Breast Cancer(乳がん治療におけるゲノム薬理学と内分泌療法).
・著者:Daniel F. Hayes, James M. Rae.
■国立がん研究センター中央病院プレスリリース
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0310/index.html
▼本件に関する問い合わせ先
昭和大学先端がん治療研究所(昭和大学旗の台キャンパス内)
TEL: 03-3784-8145
▼本件リリース元
学校法人 昭和大学 総務課(広報担当)
TEL: 03-3784-8059
大学・学校情報 |
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大学・学校名 昭和医科大学 |
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URL https://www.showa-u.ac.jp/ |
住所 品川区旗の台1-5-8 |
昭和医科大学は医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の4学部が揃う「医系総合大学」です。創立以来、“常に相手の立場に立ってまごころを尽くす”という意味の「至誠一貫」を建学の精神に掲げ、思いやりのある人間性豊かな医療人の育成を最大の使命として、教育と研究に取り組んでいます。患者さんに誠意を持って接し、患者さん本位の医療を提供すること。そして忘れてはならないのは医療人同士の思いやりです。昭和医科大学には、この医療人同士が心を通じ合わせて治療にあたる「チーム医療」の学びがあります。 1年次の富士吉田キャンパスでの全寮制では4学部の学生が一緒に生活し、医療人として大切なコミュニケーション能力と相手を思いやる心を育みます。そして2年次より専門科目を学びながら、継続的に最終学年まで体系的なチーム医療教育を実践しているのが大きな特色です。 |
学長(学校長) 久光 正(ひさみつ ただし) |