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豊田工業大学(名古屋市天白区、学長 保立 和夫)の 工学部の阿南静佳 助教、小門憲太 教授、金沢大学 理工研究域の栗原拓也 助教らの研究グループは、ナノサイズの孔の空いた結晶の中に液晶を導入したところ、結晶の中で液晶が一方向に並ぶことを見出しました。さらに熱刺激によってその並び方と複屈折が変化することを明らかにしました。
なお、本研究成果は、ドイツ時間2024年1月5日(金)公開のChemistry-A European Journal誌(オンライン)に掲載されました。
□ 発表のポイント □
1.ナノサイズの孔を有する結晶の中に液晶を入れた材料を世界で初めて作製した。
2.結晶の中で液晶が一方向に配列した。
2.結晶の中で液晶が一方向に配列した。
3.刺激に応答して複屈折と液晶の並び方が変化した。
□ 研究概要 □
ディスプレイなどに使われる液晶とは液体と結晶の間の状態のことであり、流動的であるにも関わらず分子が並んでいます。液晶は分子が異方的に並んでいるため、方向によって屈折率が異なる複屈折を示します。本研究では、1 nmほどの規則的な連続孔を持つ結晶の中に液晶を入れた「液晶と結晶の複合体」の作成に初めて成功しました(図1)。液晶と結晶の複合体では、結晶1粒の中で液晶が一方向に並ぶことが明らかになりました。さらに、結晶の外では配向性を失ってしまうような高温においても、結晶中では液晶が配向することがわかりました。一般に液晶は表面処理した2枚の板に挟んだ状態で用い、板と液晶の間の相互作用で液晶の並ぶ方向が決まります。本研究では、有機分子と金属イオンが規則的に並んだ結晶の細孔中で、液晶性分子と金属イオンの間に力が働くことで液晶が結晶中で一方向に並び、さらに高温でも配向が維持されたと考えられます。また、液晶と結晶の複合体は結晶中で並んだ液晶に由来する複屈折を示し、温度変化によって結晶だけでは生じない大きな複屈折変化を示すことが明らかになりました(図2)。新しい刺激応答性の結晶や光学材料への応用が期待されます。
□ 用語説明 □
液晶 ... 結晶と液体の中間の相状態のこと。結晶のように分子が配列しているが、液体のような流動性を示す状態。ここでは、サーモトロピック液晶を指す。
異方性 ... 物質の方向によって性質が異なること。
複屈折 ... 屈折率に異方性があること。
異方性 ... 物質の方向によって性質が異なること。
複屈折 ... 屈折率に異方性があること。
□ 論文の詳細情報 □
タイトル :Enhanced Orientation of Liquid Crystals Inside Microporese of Metal-Organic Frameworks Having Thermoresponsivity(金属-有機構造体のマイクロ孔中に包接した液晶の配向性の強化と温度応答性)
著者名:Shizuka Anan,* Takuya Kurihara, Masaki Yamaguchi, Hirotsugu Kikuchi, Kenta Kokado
雑誌:Chemistry-A European Journal
DOI番号:10.1002/chem.202303277
著者名:Shizuka Anan,* Takuya Kurihara, Masaki Yamaguchi, Hirotsugu Kikuchi, Kenta Kokado
雑誌:Chemistry-A European Journal
DOI番号:10.1002/chem.202303277
□ 研究支援 □
本研究はJST創発的研究支援事業JPMJFR2031(北川パネル「液晶と金属-有機構造体の異種相間複合化と機能開拓」)の助成を受けて実施されました。
▼本件に関する問い合わせ先 |
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広報・入試室 渉外広報グループ | |
住所 | : 名古屋市天白区久方2丁目12-1 |
TEL | : 0528091764 |
FAX | : 0528091721 |
大学・学校情報 |
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大学・学校名 豊田工業大学 |
URL https://www.toyota-ti.ac.jp/ |
住所 名古屋市天白区久方2丁目12-1 |
豊田工業大学は、トヨタ自動車の社会貢献事業の一環として設立された大学です。トヨタグループの始祖であり、わが国の産業技術開発の父ともいえる豊田佐吉(1867-1930)の遺訓を建学の理念として掲げ、1981年に誕生しました。豊田佐吉は「発明で社会の役に立ち、国家に尽くしたい」と志し、自動織機の開発に没頭。23歳で豊田式木製人力織機を発明し、初めての特許を取得しました。1924年に完成した無停止杼換式豊田自動織機(G型)は世界中の繊維産業の効率化と高品質化を推し進めました。建学の理念「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」という言葉には、先端的な工学研究を通じた新たな価値創造と社会への還元、また現代社会の課題に率先して挑む実践的な技術者・研究者の育成という、本学の使命が表現されています。 |
学長(学校長) 保立 和夫 |