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弘前大学(青森県弘前市)農学生命科学部の中島晶教授と前多隼人准教授らの研究グループは、日本ハルマ株式会社(青森県弘前市)との共同研究で、りんご搾汁残渣から開発した食品素材(注1)が認知症モデルマウスにおける記憶障害を改善することを明らかにした。また、この食品素材に含まれるグルコシルセラミド(注2)の種類について解析を行った。本研究成果は、2024年1月6日に国際科学誌『Nutrients』にオンライン掲載された。
【本件のポイント】
・りんご搾汁残渣から開発した食品素材が認知症モデルマウスにおける記憶障害を改善
・りんご搾汁残渣がマウス脳における遺伝子発現に影響
・りんご搾汁残渣の認知症予防における有用性について今後の研究に期待
【本件の概要】
青森県の特産品であるりんごの搾汁残渣は、そのほとんどが産業廃棄物として堆肥処理されている。一方、りんごの搾汁残渣にはグルコシルセラミドやトリテルペノイドなどの成分が含まれており、疾病の予防や改善に有用な食品素材となる可能性があるものの、記憶障害に対する効果についてはこれまでに研究されていなかった。
今回、弘前大学農学生命科学部の中島晶教授と前多隼人准教授のグループは、日本ハルマ株式会社との共同研究で、りんご搾汁残渣から開発した食品素材が認知症モデルマウスにおける記憶障害を改善することを明らかにした。また、この食品素材に含まれるグルコシルセラミドの種類について解析した。
りんご搾汁残渣から開発した食品素材をマウスに経口投与することにより、受動的回避試験(注3)および新奇物体認識試験(注4)において、NMDA受容体遮断薬(注5)であるMK-801により引き起こされた記憶障害が改善(図1および図2)。また、マウス脳における網羅的遺伝子発現解析の結果、この食品素材の投与により、"synapse"(注6) や"neurotransmission" (注7)に関連する遺伝子セットの発現が上昇していた。
以上の結果より、りんご搾汁残渣から開発した食品素材は脳における遺伝子発現に影響を与え、記憶障害を改善した可能性が示唆される。本成果により、りんご搾汁残渣から開発した食品素材の認知症予防における有用性について、今後の研究が期待される。また、産業廃棄物であるりんご搾汁残渣の新規活用方法の開拓が期待される。
なお本研究成果は、2024年1月6日に国際科学誌『Nutrients』にオンライン掲載された。
【語句説明】
(注1)りんご搾汁残渣から開発した食品素材:りんご搾汁残渣に含まれているグルコシルセラミド、ウルソール酸、ポリフェノールの食品素材は、サプリメントなどの健康食品として用いられる。
(注2)グルコシルセラミド:セラミドにグルコースが結合したスフィンゴ糖脂質の1種。
(注3)受動的回避試験:電気刺激と暗室との連合記憶を評価する試験。訓練試行では、マウスを明室に入れ暗室に移動したら電気刺激を与える。保持試行では、マウスを明室に入れ暗室に入るまでの時間(反応潜時)を計測する。反応潜時は連合記憶の指標として用いられる。
(注4)新奇物体認識試験:認知記憶を評価する試験。訓練試行では、2つの物体を設置した実験装置にマウスを入れ、マウスがそれぞれの物体を探索する時間を計測する。保持試行では、2つの物体のうち1つを新奇物体に交換した実験装置にマウスを入れ、マウスがそれぞれの物体を探索する時間を計測する。総探索時間に対する新奇物体に対する探索時間の割合を探索嗜好性として算出し、認知記憶の指標とする。
(注5)NMDA受容体遮断薬:N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体は神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体であり、記憶形成に重要な役割を果たしている。NMDA受容体遮断薬であるMK-801を受動的回避試験や新奇物体認識試験の訓練試行の前に投与することにより、記憶障害が引き起こされる。
(注6)synapse(シナプス):神経細胞同士が接続している部分で、ここで神経細胞から他の神経細胞に神経伝達物質により情報が伝達される。
(注7)neurotransmission(神経伝達):シナプスにおいて、神経終末から神経伝達物質が遊離し、他の神経細胞の受容体に結合して情報を伝達する過程。
【論文情報】
[論⽂名] Apple Pomace Extract Improves MK-801-Induced Memory Impairment in Mice
[著書名] Ayako Watanabe¹,², Minori Shimada¹, Hayato Maed¹,², Tsuyoshi Narumi³, Junji Ichit³, Koh Itoku³ and Akira Nakajima¹,²
[所 属] 1.弘前大学農学生命科学部、2.弘前大学大学院地域共創科学研究科、3.日本ハルマ株式会社
[掲載誌] Nutrients ( doi.org/10.3390/nu16020194 )
(参考リンク)
・弘前大学農学生命科学部食料資源学科 中島晶 教授(農学生命科学部ホームページ「教員紹介」)
https://nature.hirosaki-u.ac.jp/research/maeda-hayato/
・弘前大学農学生命科学部食料資源学科 前多隼人 准教授(研究者総覧の「研究者」ページ)
https://nature.hirosaki-u.ac.jp/research/nakajima-akira/
・りんご搾汁残渣から開発した食品素材が認知症モデルマウスにおける記憶障害を改善
・りんご搾汁残渣がマウス脳における遺伝子発現に影響
・りんご搾汁残渣の認知症予防における有用性について今後の研究に期待
【本件の概要】
青森県の特産品であるりんごの搾汁残渣は、そのほとんどが産業廃棄物として堆肥処理されている。一方、りんごの搾汁残渣にはグルコシルセラミドやトリテルペノイドなどの成分が含まれており、疾病の予防や改善に有用な食品素材となる可能性があるものの、記憶障害に対する効果についてはこれまでに研究されていなかった。
今回、弘前大学農学生命科学部の中島晶教授と前多隼人准教授のグループは、日本ハルマ株式会社との共同研究で、りんご搾汁残渣から開発した食品素材が認知症モデルマウスにおける記憶障害を改善することを明らかにした。また、この食品素材に含まれるグルコシルセラミドの種類について解析した。
りんご搾汁残渣から開発した食品素材をマウスに経口投与することにより、受動的回避試験(注3)および新奇物体認識試験(注4)において、NMDA受容体遮断薬(注5)であるMK-801により引き起こされた記憶障害が改善(図1および図2)。また、マウス脳における網羅的遺伝子発現解析の結果、この食品素材の投与により、"synapse"(注6) や"neurotransmission" (注7)に関連する遺伝子セットの発現が上昇していた。
以上の結果より、りんご搾汁残渣から開発した食品素材は脳における遺伝子発現に影響を与え、記憶障害を改善した可能性が示唆される。本成果により、りんご搾汁残渣から開発した食品素材の認知症予防における有用性について、今後の研究が期待される。また、産業廃棄物であるりんご搾汁残渣の新規活用方法の開拓が期待される。
なお本研究成果は、2024年1月6日に国際科学誌『Nutrients』にオンライン掲載された。
【語句説明】
(注1)りんご搾汁残渣から開発した食品素材:りんご搾汁残渣に含まれているグルコシルセラミド、ウルソール酸、ポリフェノールの食品素材は、サプリメントなどの健康食品として用いられる。
(注2)グルコシルセラミド:セラミドにグルコースが結合したスフィンゴ糖脂質の1種。
(注3)受動的回避試験:電気刺激と暗室との連合記憶を評価する試験。訓練試行では、マウスを明室に入れ暗室に移動したら電気刺激を与える。保持試行では、マウスを明室に入れ暗室に入るまでの時間(反応潜時)を計測する。反応潜時は連合記憶の指標として用いられる。
(注4)新奇物体認識試験:認知記憶を評価する試験。訓練試行では、2つの物体を設置した実験装置にマウスを入れ、マウスがそれぞれの物体を探索する時間を計測する。保持試行では、2つの物体のうち1つを新奇物体に交換した実験装置にマウスを入れ、マウスがそれぞれの物体を探索する時間を計測する。総探索時間に対する新奇物体に対する探索時間の割合を探索嗜好性として算出し、認知記憶の指標とする。
(注5)NMDA受容体遮断薬:N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体は神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体であり、記憶形成に重要な役割を果たしている。NMDA受容体遮断薬であるMK-801を受動的回避試験や新奇物体認識試験の訓練試行の前に投与することにより、記憶障害が引き起こされる。
(注6)synapse(シナプス):神経細胞同士が接続している部分で、ここで神経細胞から他の神経細胞に神経伝達物質により情報が伝達される。
(注7)neurotransmission(神経伝達):シナプスにおいて、神経終末から神経伝達物質が遊離し、他の神経細胞の受容体に結合して情報を伝達する過程。
【論文情報】
[論⽂名] Apple Pomace Extract Improves MK-801-Induced Memory Impairment in Mice
[著書名] Ayako Watanabe¹,², Minori Shimada¹, Hayato Maed¹,², Tsuyoshi Narumi³, Junji Ichit³, Koh Itoku³ and Akira Nakajima¹,²
[所 属] 1.弘前大学農学生命科学部、2.弘前大学大学院地域共創科学研究科、3.日本ハルマ株式会社
[掲載誌] Nutrients ( doi.org/10.3390/nu16020194 )
(参考リンク)
・弘前大学農学生命科学部食料資源学科 中島晶 教授(農学生命科学部ホームページ「教員紹介」)
https://nature.hirosaki-u.ac.jp/research/maeda-hayato/
・弘前大学農学生命科学部食料資源学科 前多隼人 准教授(研究者総覧の「研究者」ページ)
https://nature.hirosaki-u.ac.jp/research/nakajima-akira/
▼本件に関する問い合わせ先 |
|
弘前大学農学生命科学部 | |
中島 晶教授 | |
住所 | : 青森県弘前市文京町1番地 |
TEL | : 0172-39-3787 |
大学・学校情報 |
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大学・学校名 弘前大学 |
URL https://www.hirosaki-u.ac.jp/ |
住所 青森県弘前市文京町1番地 |
弘前大学は、明治9年創立の青森県師範学校を原点に140年余の歴史を持ち、歴史と文化の薫り高い城下町である弘前市に位置する総合大学です。 |
学長(学校長) 福田 眞作 |