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青山学院大学大学院理工学研究科・春山純志准教授の研究グループが「グラフェン」磁石の創製に成功

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青山学院大学大学院理工学研究科・春山純志准教授の研究グループはこのたび、「グラフェン」という炭素原子一層でできた膜に穴をあけるだけで磁石になるという画期的な発見をした。この発見は今後、希少元素フリーで環境に優しい炭素原子一層からなる「超軽量・フレキシブル透明磁石」の開発や新規スピン物性現象・スピン素子の研究に発展するものとして大いに期待される。

◆グラフェン磁石の創製
 「グラフェン」は炭素原子一個分の薄さしか持たない究極の二次元薄膜である。英国マンチェスター大学のAndre Geim教授らが簡易な生成方法を2004年に発見して以来、爆発的な研究が世界中で進み、昨年のノーベル物理学賞に輝いた。
 グラフェンの中では電子は超高速で走る上に、透明でフレキシブルかつ強固であるため、超高性能トランジスタ・透明導電膜としての応用研究も盛んである。数年後にはiPodなどのタッチパネルへの搭載も予定されている。

 今回の発見は、グラフェンに低欠陥の六角形細孔を蜂の巣状にあけて水素雰囲気中で熱処理すると、磁性元素を一切使っていないのにグラフェンが磁石にもなることを発見したものである。グラフェンの端(エッジ)の原子配列が「ジグザグ」と呼ばれる構造で水素原子が付着した場合、電子が端に多く溜まり相互作用し、その結果電子スピンの方向が揃い、両側をこのジグザグ端で挟まれた細いグラフェンは磁石になるという理論予言を初めて実証した。この場合、細孔周囲の端がジグザグ型原子配列を持ち、細孔間の細いグラフェン領域で磁化が発生しているものと考えられる。多孔質アルミナ膜をマスクとして不活性ガスで低ダメージエッチングし、リソグラフィを使わずに六角形細孔を蜂の巣状にグラフェン上にあけ熱処理したことで、低欠陥でこの細孔間グラフェン領域が大量に創出され、磁石創製につながったものと考えられる。

 今後の課題として、細孔端の原子配列の直接の観測やその構造制御が必要となるが、この発見は今後、希少元素フリーで環境に優しい炭素原子一層からなる「超軽量・フレキシブル透明磁石」の開発や新規スピン物性現象・次世代スピン素子の研究に発展するものとして大いに期待される。

■論文掲載:
 米国物理学会誌『Physical Review Letters』11月末オンライン速報掲載予定、米国物理協会誌『Applied Physics Letters』99, 183111 (2011年11月)、同News Letter 『NanotechWeb』11月末掲載予定

■共同研究:
 東京大学理学部物理学科 福山寛研究室、フランス国立科学研究センターChshiev教授グループ ※90%は春山研究室の成果
 科研費補助金、私立大学ハイテクリサーチセンタープロジェクト、フランス政府などによる支援。

▼本件に関する問い合わせ先
 青山学院大学大学院理工学研究科
 TEL:042-759-6256
 FAX:042-759-6524
 E-mail: J-haru@ee.aoyama.ac.jp
 URL: http://www.ee.aoyama.ac.jp/Labs/j-haru-www/

▼本件の取材に関する申込み先
 青山学院本部広報部
 TEL: 03-3409-6578
 FAX: 03-3486-4712
 URL: http://www.aoyamagakuin.jp/