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中央大学理工学部の野澤和生助教らが、単元素準結晶の3次元構造の作製に成功――準結晶の安定性の解明や準周期性を反映した新物性の発見に期待

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中央大学(東京都八王子市)理工学部物理学科の野澤和生助教らの研究グループはこのたび、既存の準結晶基板上で鉛を結晶成長させ、単一元素からなる準結晶の3次元構造を作製することに世界で初めて成功した。これにより、準周期構造の形成過程やその安定化メカニズムの解明、準周期構造がもたらす新しい物性の発見など、基礎、応用両面の研究が促進することが期待される。また、実験条件の最適化により、単元素準結晶の実現にも寄与することが見込まれる。

 中央大学理工学部物理学科の野澤和生助教、石井靖教授、(独)物質・材料研究機構の主席研究員である下田正彦氏、東北大学多元物質科学研究所の蔡安邦教授らはこのたび、英国リバプール大学のH. R.Sharma 講師らと共同で、単一元素からなる準結晶の3次元構造を作製する事に世界で初めて成功した。

 準結晶とは、1984年にD. Shechtman 博士(2011年ノーベル化学賞受賞)らによって発見された物質で、現在では100種類以上の合金系や高分子、ナノ粒子系などで見出されているが、単一の元素からなる準結晶は見つかっていない。準結晶は、通常の周期結晶には見られない5角形や10角形の原子配列からなり、黄金比とも密接に関係する「準周期」と呼ばれる美しい結晶構造(参考図参照)が特徴だが、その結晶構造と化学組成の複雑性のため、準周期構造が安定化するメカニズムや、その特殊な結晶構造を反映した新しい性質など、未だ多くの部分が謎に包まれたままである。

 こうした理由から、化学的に単純な「1つの元素からなる」準結晶の探索が長らく続けられてきた。今回、共同研究グループは、既存の銀(Ag)-インジウム(In)-イッテルビウム(Yb)合金の準結晶基板上に鉛原子を蒸着させる事によって、基板準結晶の構造を模した「準周期構造の鉛」を結晶成長させることに成功した。これまで同様の手法で1原子層(2次元)の単元素準周期膜を実現した報告はあったが、複数の原子層(3次元)からなる単元素準周期構造の作製に成功した例はなかった。今回の結果は単元素準結晶の実現に向けた大きな一歩であるとともに、今後、周期結晶にはない準周期構造特有の物性の発見や、準周期構造の発現メカニズムの解明など、様々な方面の進展に繋がる期待がもたれる。

▼本件に関する一般の方の問い合わせ先
 野澤 和生 (ノザワ カズキ)
 中央大学理工学部物理学科 助教
 TEL: 03-3817-1779
 FAX: 03-3817-1792
 E-mail: kazuki.nozawa@gmail.com

 中央大学理工学部物理学科 教授
 石井 靖 (イシイ ヤスシ)
 TEL: 03-3817-1742
 FAX: 03-3817-1792
 E-mail: ishii@phys.chuo-u.ac.jp

 下田 正彦 (シモダ マサヒコ)
(独)物質・材料研究機構 主席研究員
 TEL: 029-859-2839
 FAX: 029-859-2801
 E-mail:  SHIMODA.Masahiko@nims.go.jp

 蔡 安邦(サイ アンポウ)
 東北大学多元物質科学研究所 教授
 TEL: 022-217-5594
 FAX: 022-217-5723
 E-mail:  aptsai@tagen.tohoku.ac.jp

▼本件に関する報道関係の方の問い合わせ先
 中央大学 研究支援室
 加藤 裕幹 (カトウ ユウキ)
 TEL: 03-3817-1603
 FAX: 03-3817-1677
 E-mail: k-shien@tamajs.chuo-u.ac.jp

 東北大学多元物質科学研究所
 総務課総務係
 TEL: 022-217-5204
 FAX: 022-217-5211
 E-mail: syomu@tagen.tohoku.ac.jp