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創価大学工学部の戸田龍樹教授が長崎県新上五島町で「藻場再生実証実験」プロジェクトを開始

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創価大学工学部の戸田龍樹教授らが進めている「陸と海を繋ぐ“栄養塩循環システムによる藻場再生実証実験”」プロジェクトの開始式が10月17日、長崎県の新上五島町役場で行われた。これは、46の島を有する同町からの委託を受けて始まったもの。当日は同プロジェクトの説明および質疑応答、実証実験物施設の視察などを行った。

 10月17日、「陸と海を繋ぐ“栄養塩循環システムによる藻場再生実証実験”」プロジェクトの開始式が長崎県・新上五島町役場で行われた。これは、46の島を有する同町からの委託を受け、創価大学工学部・戸田龍樹教授らが進めているもの。
 開始式には江上悦生町長をはじめ、中山町議会議長、町職員や漁業関係者、協力企業である太平洋セメント株式会社や三洋テクノマリン株式会社の関係者などが出席。創価大学からは山本修一工学研究科長、戸田龍樹教授、土屋健司助教、戸田研究室の学生らが出席し、同プロジェクトの説明および質疑応答、実証実験物施設の視察などを行った。

 このプロジェクトは、温暖化による高水温や沿岸汚染、魚介類による食害、貧栄養、着生阻害など、海域によっていくつかの要因が複合して起こっていると考えられている藻場の消失による磯焼け被害を止めようと、同大環境共生工学科と新上五島町役場が行っているもの。2012年より栄養塩の共同調査を行い、初夏から秋季にいたる期間の栄養塩、特にリンの枯渇が、海藻消失の一つの大きな要因であるとの報告をまとめた。

 そこで、太平洋セメントが開発した新素材の吸着剤「リントル」を使いこれまで処理廃棄されていた排水からリンを回収。さらに、点滴灌水チューブと濾布を使って、海藻が全く生えていない試験海区に添加する実験を、新上五島町有川漁協の協力のもと実施することになった。
 創価大学が実施母体となり、長崎大学の研究者とも連携して、太平洋セメントをはじめ、海洋コンサルタント企業として実績のある三洋テクノマリンと産官学のコンソーシアムを組み、3年間の藻場再生への研究開発を行う。

 戸田教授からの研究内容の説明に続き、太平洋セメント株式会社の明戸剛氏からは、リン資源は枯渇の危機に瀕しており、今回は下水処理場やし尿処理場からリンを回収することや、現在、北海道、千葉県、知多市と連携してリン回収の実証実験を進めていて、成果が出ていることなどが示された。また三洋テクノマリン株式会社の永友繁氏からは、実験場所周辺の藻場の分布状況や実験施設について説明があった。
 町役場でのこれらの概要説明の後、実験いかだが設置されている鯛ノ浦漁港に移動し、実験施設の見学を行った。

 江上町長は「現在、新上五島町をはじめ、多くの自治体が悩んでいる磯焼けは、これまでもさまざまな調査を行ってきましたが、目に見える成果が出ていません。それは、原因が非常に複雑であるからです。そんな中、3年前から調査依頼している創価大学の戸田教授の研究で、海中の栄養素のなかに『リン』が減少しているとの結果が出ました。新上五島町は少子高齢化の影響もあり、人口減少が続いています。将来にわたって町が自立するためには、産業振興が必要です。豊かな海を蘇らせ、島の自然景観を保護していくことで、島の自然や歴史、文化に対する意識の変化が起こり、産業振興に繋がると思っています。産学官民が一体となって、多くの方々の協力をいただきながら、何としても成功させてまいりたいと思います」と挨拶した。

 戸田教授は「海のゆりかごである“藻場”の再生は、減少している漁獲量を増加させる鍵です。このプロジェクトが成功すれば、陸と海を繋ぐ現代版循環型社会の新しいモデルができることになります。創価大学工学部で行われてきたさまざまな研究開発が、自治体の環境問題の解決に貢献することを願っています」と語った。

▼本件に関する問い合わせ先
 創価大学企画室企画広報課
 TEL: 042-691-9442
 E-mail: publicrelation@soka.ac.jp

6179 戸田研究室の古江凌介さん(4年)、井上幸男さん(4年)は現地に滞在しながら研究を続けている

6180 鯛ノ浦漁港に実験いかだを設置

6181 藻が見当たらない岩場

6182 太平洋セメントが開発した新素材の吸着剤を使ってリンを回収